「やさぐれ」で注目の薄幸 容赦なき“街イジり”が笑って許される理由

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本物の酒浸り芸人

 納言はこの漫才でブレークを果たした。そこから幸の酒飲みキャラにも注目が集まった。彼女は1日も欠かさず酒を飲んでいる本物の酒浸り芸人だ。

「アメトーーク!」で自宅にカメラを置いてその飲みっぷりを検証したときには、発泡酒24本を飲み続け、そこにビールを加えて、いったん寝た後でまた目を覚まし、迎え酒をしてからようやく眠りについた。お笑い界有数の酒豪として知られる千鳥の大悟もあきれるほどの本物の大酒飲みだった。

「テレビ千鳥」では、酒に合う自作の簡単なつまみのレシピを紹介したこともあった。家で1人で酒を飲みながら料理をするため、料理に時間がかかると途中で酔いつぶれて眠くなってしまう。だから、彼女にとってつまみは簡単に作れるものでなければいけないのだ。

 幸は、見た目は良くないが味の良い自分の作る料理を「汚料理(おりょうり)」と呼んでいた。その味は試食した共演者からも絶賛されていた。

 幸は通っていた農業高校で3回の停学を食らい、退学処分になっているという過去もあり、そのやさぐれキャラは筋金入りだ。

 街ディスり漫才ばかりが有名になっているが、最近の納言の漫才では「街ディス」はほとんど封印されていて、新しい形のネタを次々に見せている。

 幸ばかりに注目が集まる中で、相方の安部紀克はどんどん影が薄くなっている。最初は一緒にネタを作っていたのだが、最近では薄だけにネタ作りを任せるようになり、ますます存在感がなくなってきている。とはいえ、この感じがキャラの濃い幸と好対照を成しており、コンビとしてのバランスは悪くない。

 やさぐれ女性芸人の「若頭」である幸がコンビを引っ張っていく限り、今後も活躍が期待できそうだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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