10月の消費者物価指数は3・6%上昇…40年ぶりのインフレは日本経済復活のチャンス

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「賃金凍結」状態を打破できるか

 ようやくデフレ脱却の一歩を踏み出したわけだが、消費者が価格上昇を容認したとしても、賃金が上がらなければこの傾向は長続きしない。

 だが、賃金上昇の道のりはいまだ不透明だと言わざるを得ない。

 政府の諸統計によれば、日本の労働者の名目賃金は1990年代前半までは右肩上がりだったが、その後は横ばい状態になっている。世界の先進国で構成される経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の名目賃金の伸び率(2000~2021年)は加盟34カ国中の最下位だ。

「賃金凍結」の状態にあると言っても過言ではない日本だが、労働需給の逼迫が起きつつあるなどフォローの風が吹き始めている。アルバイトや非正規労働者の賃金の上昇が鮮明になっているものの、正規労働者にまでこの波が及んでいないのが実情だ。

 円安で企業収益が改善している企業を中心に「インフレ手当」を支給する動きが出ているが、小手先の感は否めない。

 本格的な賃上げの動きが起きていないのは、多くの企業が「人件費の増加分を価格に転嫁すればライバルに顧客を奪われる」と懸念しているからだろう。

 安倍政権下で、日本銀行の異次元緩和から生ずる収益を原資に企業に対して賃上げ要請が再三なされたが、肝心のデフレ・ マインドを払拭できず、失敗に終わってしまった。

 だが、長年の宿痾であったデフレ・マインドは雲散霧消しつつある。

「新しい資本主義」を掲げる岸田政権は、賃上げに伴う人件費の増加分を企業が価格に転嫁しやすい環境づくりの構築に努めることで、40年ぶりのインフレというピンチを日本経済復活のチャンスに変えるべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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