100億円をだまし取った「パクリ屋のドン」が急死 実の娘、親族が明かす素顔と「最期の言葉」

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ここ最近は指南役に

 そんな詐欺師の名が初めて新聞各紙で報じられたのは、1993年7月のこと。倒産した衣料販売会社を買い取った武藤は、“経理部長”を名乗り、上場会社3社を含む700社からゴルフ用品、金地金など30億円分をだまし取った事件で警察のお縄となっている。以後、報じられたものだけ見ても、2003年の「億万寿楽堂」というダミー会社を作り、50社以上から約7千万円を集めた詐欺事件や、17年には東日本大震災の復興イベントを装って、食品卸会社など計50社から20万点、あわせて2億1千万円相当の商品をだまし取り、逮捕起訴されている。

「武藤は商談でも偽名を使い、会社登記は他人の名前を借りるなど表に自分の存在を出さないようにしていました。ここ最近は指南役に徹し、周囲からは“会長”などともてはやされていたようです」(先の記者)

 ゆえに被害者は絶えることがなかったというのだ。

「皆がファンになる」

「武藤さんの最初の印象は人の良いオヤジ。だますにはもってこいの顔をしているでしょう。だまされた人以外は、皆がファンになる。電話もマメで義理堅かった」

 そう振り返るのは、武藤と40年来の親交があったという知人男性である。

「最初に会った頃の彼は、埼玉の草加で食料品や衣料品を扱う会社の事務所を持っていた。いろんな卸のルートを開拓していたけど、まともにやっても利益が出ないと思ったんじゃない。商品だけ受け取り、金を払わず倒産するっていう“商売”は昔からあったからさ。だいたい2年くらいの頻度で詐欺の舞台となる会社やメンバーを総とっかえして、足がつかないようにしていた。休眠会社を買い取ったり、潰れそうな会社の社長にいくらか金を払ってお願いして、潜り込むこともあったと聞いたな」

 土木系の企業を利用した際は、工事関係の道具を大量に仕入れて倒産させたこともあったという。

「長年やっていた会社なら信頼があり、最後に支払いができなくても“払う気はあったけど潰れた”と言えば説明がつくので事件化しづらい。そういうやり方を繰り返していたけど、例の震災関連の詐欺で逮捕されて以降は、“詐欺なんかやってない”と言っていた。年も取ったし、指示役くらいのことしかしていなかったんじゃないか。今年1月に逮捕されるまでは、ピンピンしていたけどね」(同)

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