回転寿司で断トツ人気の「サーモン」は、かつて築地のプロから門前払いだった 知られざる「ノルウェーサーモン誕生秘話」

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寿司ネタ・刺し身に絞って正解

「物事は最初が肝心」。オルセン氏がサーモンを寿司ネタとして売るという考えを決して曲げずに貫いたことで、今のサーモン人気があると言っても過言ではない。魚流通に詳しい水産アドバイザーは、「ノルウェーサーモンが『切り身』『塩サケ』用としてデビューしていたのなら、『刺し身もOK』と付け加えたとしても、今ほど寿司ネタとして浸透せず、国産やチリなどの塩サケの競争に負け、市場から消えていたかもしれない」と話す。

 オルセン氏は今年9月中旬、同国西部のオーレスンにあるホテルでメディア関係者らを対象に開催された講演の場で、当時を振り返りながら、その経緯を語った。ちなみにオルセン氏は今では「サーモン寿司の発明者」として、ノルウェーでちょっとした有名人となっている。

 サーモンの寿司ネタとしての可能性を十分に感じていたオルセン氏は、単価の高い刺し身用商材としてのデビューに固執した。こだわり続けた要因については、「日本ではサケを生で食べないという固定観念があるが、ノルウェーのサーモンは(寄生虫がおらず)おいしく食べられる。その偏見さえ払拭できれば、きっと日本で受け入れられると感じた」などと述べている。

信念と「ダメ元」でこだわり続けた

 それでも、日本の食習慣の壁を乗り越えるのは容易ではなかった。最終的にはいわば「ダメ元」で、日本の関係者との商談に当たってきたとオルセン氏は打ち明ける。当時、ノルウェーでは数千トン規模のサーモンの不良在庫があり、その処理に関係者は頭を悩ませていた。

 多くのサーモン在庫を抱え、幾度となく寿司ネタとしてのサーモンの可能性を否定されたオルセン氏だが、単価の安い切り身用として「投げ売り」するのではなく、ダメ元で「寿司ネタ」「生食用」といった食べ方にこだわり続けたことが遂に実を結んだ。日本の大手食品会社が、刺し身用を条件とした商談に応じ、大量のサーモンをさばくことができたのだ。

 オルセン氏の粘り勝ちだったわけだが、その要因についてオルセン氏は、「抱えていた在庫がそれほど多くなく、ハイリスクとはとらえていなかった」と、意外にも楽観的であったと振り返る。数千トンといえば、サーモン何十万匹にも相当するが、国レベルで考えれば大したことはなかったのだろうか。もっとも、寿司ネタがダメでも冷凍サーモンが廃棄されるわけではないから、こだわり続けられた面もあるのだろう。

 今では欧米やアジア諸国など、サーモンは世界中で消費されている。それも「寿司文化発祥の日本で、寿司ネタとして認められたことが、ノルウェーサーモンがここまで愛されるようになった最大の理由」とオルセン氏。

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