魚を週2で食べるとリスク低減? 歩き過ぎは禁物? 認知症の予防法と超早期発見のカギとは

ドクター新潮 ライフ

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アルコールの適量は?

 さらに、オランダの別の調査では、60歳以降にうつ病になったことがある患者の発症リスクは2.34倍であると報告されていますし、5年以上のアルコール乱用あるいは大量飲酒の経験がある高齢男性は、そうでない男性に比べて認知症発症リスクが4.6倍との報告もあります。なお、アルコール摂取の適量は、350ミリリットルの缶ビールを週に6本程度とされています。

 こうした危険因子を極力排除することに加え、発症リスクを積極的に下げることにつながる生活習慣を取り入れることも大切です。

 フランスの高齢者を対象に行われた調査では、週に2回以上魚を食べる人は、2回未満の人より認知症の危険率が下がるという結果が出ていて、先に紹介したロッテルダム研究でも、魚の摂取量を増やすとアルツハイマー病のリスクが下がることが分かっています。

 そして、発症リスクを下げるには「血流」が大事であることも紹介しておきたいと思います。血流が悪くなると、脳に栄養が十分に行き渡らなくなり、神経原線維変化、すなわちタンパク質のゴミ化は進んでしまうと考えられます。

過度な運動は逆効果?

 では、血流を良く保つにはどうすればいいのか。

 最近の研究では、散歩の重要性が指摘されています。1日の歩数が、5千~1万歩の場合に認知症発症リスクが最も下がるというのです。適度な運動によって、血流が良くなるためでしょう。

 ただし、注意が必要です。1万歩を超えるとリスクが上がってしまうケースも報告されているからです。つまり、「歩き過ぎ」も良くない。

 私自身、学生にこんな実験を行ったことがあります。校舎の1階から9階まで階段で駆け上がった後に暗算をしてもらったのです。通常、暗算で脳を使うと、思考や集中をつかさどる前頭前野の血流が促進されるのですが、その実験では全く血流が良くならなかった。このことからも適度な散歩くらいがちょうどよく、過度な運動はむしろ逆効果である危険性を考慮する必要があります。

 また、あくまで仮説に過ぎませんが、散歩のメリットとしては、外を歩くことで空間認知機能が働き、嗅内野が活性化するために発症リスクを下げることにつながっている可能性も考えられるでしょう。

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