魚を週2で食べるとリスク低減? 歩き過ぎは禁物? 認知症の予防法と超早期発見のカギとは

ドクター新潮 ライフ

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VRゴーグルを使った検査法

 ところが、嗅内野における神経原線維変化は、軽度認知症になる20~30年前、早ければ40代で始まります。つまりその時点で、症状こそ現れていないものの、実質的にはすでにアルツハイマー病は「始まっている」ともいえるわけです。しかし現状では、画像診断でも長谷川式スケールでもそれを見抜くことはできない。発症前に「早期発見」できれば、医療機関にかかるなどして対策が可能なのに、それがかなわないのです。

 そこで注目すべきが、嗅内野の空間認知機能です。この機能が低下していれば、神経原線維変化が始まっている蓋然性が高い。つまり、空間認知機能の衰えを知ることで、アルツハイマー病を「超早期発見」できる可能性があるのです。従って、私たちは今、VR(バーチャルリアリティー)ゴーグルを使った検査法の研究に取り組んでいます。

 VRゴーグルを通して見るバーチャル空間で、目印に頼ることなくどれだけ正確にゴールできるかを計測することで、「嗅内野のGPS機能」の低下度合いが分かる。アルツハイマー病を発症してはいないものの空間認知機能にどれだけ支障が生じているか、つまり水面下で発症に向けた現象がどれだけ進行しているかを測定できるように研究を重ねているのです。

カウントダウンは40代から

 ここまで見てきたように、「アルツハイマー病へのカウントダウン」は早ければ40代から始まっているわけですが、もちろん、危険因子を減らすことで発症リスクを下げることは可能です。例えば高血圧。高血圧患者で降圧剤を使用した人は、そうでない人よりアルツハイマー病発症リスクが約50%抑えられたという報告があります。いずれにしても、「高血圧状態」は万病のもとでしょうから、塩分の取りすぎや肥満には気を付けなければいけません。

 また、55歳以上を対象とした大規模な疫学研究として知られ、信頼度が高いオランダの「ロッテルダム研究」では、喫煙がアルツハイマー病の発症リスクを1.56倍にし、糖尿病患者の発症リスクは1.9倍であることが報告されています。

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