「出産準備金」新設は効果なし! 結婚、子育てが損になる国・日本…欧米との違いを専門家が解説

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「愛」ではなく「お金」

 少子化の帰結が「将来、高齢者の生活が苦しくなる」なら、少子化の原因が「将来、若者の生活が苦しくなるのを避けるため」というのも皮肉である。

 結婚は、単に好き合った同士が永遠の誓いを立てるという以上の意味をもつ。というよりも、3組に1組が離婚し、セックスレス夫婦が5割を超える今、二人の愛情が永遠に続くと信じる方が珍しい時代になっている。特に日本では、結婚を「愛」ではなく、「お金」で考える人が以前より増えているのではないか。

 結婚すれば、二人で新しく生活を始めることになる。当然ながら、そのためには、住居が必要だし、家電製品もそろえなくてはならない。地方だと車も必需品だろう。子どもが生まれたら、ミルク代だけでなく、将来の教育費の負担まで考えなくてはならない。それには、将来にわたってそれなりの安定した収入が必要だと考えるのは当然である。

 という話をすると、1990年以前に結婚した高齢者から、昔は貧しい中で結婚して生活していたという反論が必ず来る。

 少子化という言葉もなかった昭和の時代と、少子化が深刻化する平成以降では、若者をとりまく状況に大きな断絶がある。それは、家族を巡る状況と経済を巡る状況である。

親との同居生活の居心地が悪かった

 おおざっぱに言えば、戦後から昭和までは、若者の雇用は安定しており、将来の収入増加は確実だった。一方、平成以降は、若者の親は比較的豊かであり、未婚者の多くは親と同居している。しかし、雇用に格差が生まれ、将来の収入増加どころか、安定も見込めない若者が増えている。これが、若者がなかなか結婚しない、子どもを産み育てない理由である。

 戦後から高度成長期にかけては、若者の親の生活は貧しく、きょうだいも多かった。親の家にいても、きょうだい一緒の部屋に押し込められていたり、農業など家業を手伝わされる人も多かった。女性の場合は、家事をやらされたり、頭の固い親の元で自由に旅行するどころか外出もままならなかったりした。つまり、親との同居生活の居心地が悪かったのである。一方、男性では実家を出て生活する人も多かったが、狭い風呂なし下宿とか寮住まいの人も多く、コンビニもなかったので、食生活には苦労していた。

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