宮本隆治アナが振り返る「NHK紅白」 北島三郎さんと小林幸子さんの登場で起きたハプニングとは

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閉じたままだった小林幸子の羽根

 時間を読むプロでもある宮本氏が僅かに読みを間違えたこともある。当時SMAPの中居正広(50)が白組司会を務めた1997年(第48回)のことだ。第2部のトップバッターもSMAPで、「ダイナマイト」「セロリ」を歌った。

宮本「この時の第2部の冒頭は私の声で始まるコールドオープニングでした」

 コールドオープニングとは、番組の冒頭を演奏に乗せてコメントをするのではなく、コメントだけで始める演出方法をいう。

宮本「予定では、まず私が『歌は心によりそう……。第48回NHK紅白歌合戦!』とコメントし、演奏が開始され、出場者が全員登場する手筈になっていました。が、SMAPが登場するやいなや『ワーッ』って大歓声が沸き起こり、演奏が全く聴こえないんです。リハーサルの際、音で覚えていたきっかけが、大歓声にかき消されて分からない!勘でやりましたが、7秒遅れました」

 7秒は一瞬のように思えるが「オープニングだと痛い」そうだ。翌年から総合司会はイヤモニ(スタッフの声などが聴こえるイヤホン)をつけることになった。

 ラジオの演出の監督にまわっていた2003年(第54回)には危機管理的な役割も果たした。一例は小林幸子(68)が「孔雀」を歌った際、幅13メートルで高さ7.5メートルの巨大衣装が作動しなかったハプニングである。

 巨大衣装は羽根型のもので、孔雀のように開くはずが、閉じたままだった。この時、ラジオの実況をしていたのは「鶴瓶の家族に乾杯」などの小野文惠アナ(54)である。

宮本「小野アナから『宮本さん、翼が開きません。原因を調べてください』とメモを渡されました。私も小野アナもリハーサルを見ていますから、異変にすぐ気付いたんです」

 宮本氏はNHKホール2階にあるラジオの中継席からステージの奈落に向かった。すると小林のスタッフたちが沈痛な表情なのが見て取れた。

宮本「皆さん、この瞬間に文字通り命を賭けているわけですから」

 異変の理由は電源にあったことが分かる。なぜか電源が外れていた。ここで宮本氏は考えた。

宮本「異変を放送で紹介すべきかどうかです。我々はリハーサルで本来の羽根の動きを見ていますが、視聴者の方は初めてご覧になるので、異変かどうかが分からないんです」

 宮本氏は結局、小野アナに対し「電源が抜けた模様だが、原因は分からず。コメントするな!」と指示した。視聴者側に不必要な情報を与えないほうがいいと判断した。テレビでも異変は伝えられなかった。

宮本「紅白では総合司会もラジオの演出の監督も『額縁』ですから。『絵』である歌手の方を引き立たせるのが役目。万一、『絵』に何かがあった場合、それを支えて差し上げなくてはなりません。トラブルがあったら、ご本人の顔を潰さないようにしながら修正をしていく。トラブルについてコメントするかどうかなどの判断は全て総合司会に任されています」

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