「電磁波が出ている…」 探偵が精神疾患者を騙して逮捕 「誇大広告が当たり前」の探偵ビジネスの闇

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真っ赤なウソだった「全国ネットワーク」

 今回警視庁に立件された「あなたの街の探偵社」も、実態のある事務所を設けていなかった疑惑がある。ホームページに本店として書かれていた渋谷区神宮前の住所に行くと、3階建ての雑居ビルがあったが、看板や郵便受けにも屋号らしきものは見つからなかった。

 1階は飲食店で2階は歯科医院。唯一可能性がありそうな3階だけ表札はなく、室内にいた男性に「ここに探偵社がありましたか」と尋ねても、「違う」、「知らない」と答えるのだ。

 にもかかわらず、ホームページには「あなたの街の探偵社グループは、全国に対応しております」「安心と信頼の全国探偵社ネットワーク」などと謳っていた。

「ホームページではさも全国規模で展開していて、何人もの調査員を抱え、どんな調査案件にも対応可能みたいに謳っている業者が結構ありますが、大概はウソ。探偵は携帯電話一本、車一台あればできちゃう仕事なんで、一人でやっている人のほうが多いんです。調査に人数が必要な時は、同業者に声をかけて人をかき集める。地方からの依頼があっても、契約の時だけ立ち会って、あとは現地の業者に報酬を折半とかにして投げてしまえばいいんです」

「あ行」から始まる屋号が流行っていたワケ

 ちなみに、インターネットが普及する前の営業ツールは、いまはもう見かけなくなった「電話帳」だった。

「どうやったら一番目につく位置に来るかを考えて、“あ行”から始まる屋号をつける業者も多かった。一面広告ともなると、抽選になります。私も一回、NTTで行われた抽選会に行ったことがありますが、20社くらい来ていた記憶があります」(同)

 今回、摘発された業者は、ホームページ上で「電磁波対策」「集団ストーカー対策」などと謳い、200人以上から約1億3000万円をだまし取っていたとみられる。

「電磁波みたいな目に見えないものに悩んでいるという人は、カモにしやすい分、トラブルにもなりやすい。自宅に行って盗聴器調査などを一通りして、『どこにも電磁波が過度に出ているようなものはありませんでした』と告げて帰っても、夜になったら『また出ている。多分、上の階の人が出しているんだ』と騒ぎ出す。妄想に取り憑かれているんです。だから、きちんと相手を納得させながら作業を進めていくことが重要になります。今回、捕まった業者は、カネだけ取ってぞんざいに扱っていたんでしょう。普通は警察に駆け込まれそうになったら、トラブルを恐れてお金を返しちゃいます」(同)

ちゃんとした業者は不安を煽らない

 一般社団法人「日本調査業協会」副会長の松本国隆氏は、「誇大広告をしている業者は多いので、ちゃんとした業者か見極める姿勢が大切」と語る。

「悪徳業者は相談者の不安を煽り、『犯人を捕まえましょう』などと言って他の調査に誘導して料金を嵩増します。一方、まともな業者は、相手が明らかに精神疾患で妄想に取り憑かれているとわかったらお断りします。調査するにしても、お客様の不安を取り除くことを第一に考え、不安を煽るようなことは絶対にしません。信頼できる業者かどうかは、ちゃんとした協会に加盟しているかどうかを目安にしてほしい」(松本氏)

デイリー新潮編集部

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