破格の金が動いた今年の「リブゴルフ」 大金を得た選手が勝者なのか
世界ランキングの問題
こうして見ると、リブゴルフに移った人々は、お金の面では誰もが「得をした人」と言えそうである。
だが、これまで世界の頂点、あるいはその近辺で輝いていたトッププレーヤーたちは、リブゴルフ移籍後、世界ランキングのポイントを得ることができず、順位は下降の一途を辿っている。その結果、来年のメジャー大会に出場できないことになれば、それは彼らにとっては「甚大なるダメージ」となる。
そんな中、R&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)のマーチン・スランバース会長は、「来年の全英オープンにおいてはリブゴルフ選手を制限しないつもりだ」と明かした。しかし、制限はされないとしても、リブゴルフ選手の世界ランキング下降が止まるわけではない。
リブゴルフにはいまなおテレビ放映権契約がつかないため、試合中継はユーチューブなどごく一部の方法に留まっており、かつてのスター選手たちの露出が激減しているのも事実だ。
いや、選手の露出度合いを取り沙汰する以前に、世界的に眉をひそめられているサウジアラビアのオイルマネーに「尻尾を振って移籍した」と批判され、古巣のツアーを「平気で裏切った」との誹りを受け、せっかく築き上げてきた信頼や名声を失った元トッププレーヤーたちは、「大損をした人」と言っても過言ではない。
だが、リブゴルフでジョンソンのチームメイトとしてプレーしている元PGAツアー選手での米国出身のパット・ペレス は、「たくさんの批判や誹りを受けているけど、そうしたことを僕はまったく気にしない。やるべきことをやったぜ」と、ビッグマネーを得たことにただただご満悦である。
何を「得」と考え、何を「損」とみなすか。それぞれの価値観によって、今年、「得をした人」と「損をした人」の見方や定義は大きく分かれるのだろう。
しかし、「大金を得ること=勝者」とだけは考えたくないし、そう考える人々だけでゴルフ界が占められてしまうことだけは避けたいと私は思う。
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