バルト人が日本に持ち込んだ偽米ドル札 北朝鮮ではない“意外な製造国”とは

  • ブックマーク

Advertisement

「領事館通報」

 幸い、チェチェン製の偽米ドル札は、他には発見されなかった。

「捜査の結果、日本にはチェチェン製の偽米ドル札のシンジケートはまだないことが判明しました。逮捕された男が偽米ドル札を持ち込んで、日本で流通させようとしたのを未然に防いだことになります」

 この事件以降、バルト人やチェチェン人が日本に入国するためにビザを申請した場合、偽札の使用や製造による前科がないかチェックするようになったという。

「チェチェン共和国はロシア連邦に属しているので、チェチェン人の国籍はロシアです。とはいえ、現住所を調べればチェチェンの人間であることは分かる。前科があれば、ロシアの日本大使館は警察庁や入管に知らせることになっています」

 ところで、冒頭で紹介した、勝丸氏に相談を持ちかけた大使は、「領事館通報」を希望していた。

「ウィーン条約に従って日本と領事条約を結んでいる国であれば、領事館通報を依頼することができます。警察に身柄を拘束された人が、大使館に通報して欲しいと意思表示すれば、領事と面談することができる制度です。そして領事に弁護士や通訳を依頼したり、本国にいる親族と連絡を取ることができます」

 もっとも、逮捕されたバルト人は大使に偽米ドル札のことを聞かれたくなかったのか、領事館通報の意思はないと話した。結局、偽造通貨行使の疑いで起訴され、国外退去処分になった。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。