日本オープン95年ぶりのアマのV 学生アマに負け、プロは猛省すべき

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 日本一を決める日本オープンは、学生アマの蟬川泰果(東北福祉大四年)が初日からトップで逃げ切り、10アンダーで初優勝した。6打差で追い上げる比嘉一貴は2番ホールで、スタートから連続バーディを決めた蟬川に8打差と離され、逆転の可能性は消えた。【早瀬利之/作家・ゴルフ評論家】

 追い上げる立場の者は、アウトでバーディを決めて追い詰め、後半から逆転するのが勝負のコツだが、逆に蟬川に突き放され、早くも勝負ありだった。

 かつての名人戸田藤一郎プロは「最終日の追い上げは、スタートからバーディを決めて敵を追い詰めて、相手の息を止めんと勝てへん」と言っていたが、今のプロたちは勝負の駆け引きを知らなすぎる。原因はマッチプレーで戦っていないからだ。

 日本一を決めるメジャー戦となると、目の色を変えて戦うものだが、昨今のプロにはそんな気迫は全く感じられない。プロとしてのプライドは何処に行ったものか。学生アマ一人に負けたプロたちは全員猛省すべきだろう。

 私は五十年近く、日本オープンを含めて全英、全米オープンを取材してきたが、今回の日本オープンほど、ひどい大会はなかった。その一つは開催コースにもある。

人工的なホールは控えて欲しい

 日本オープンは全英オープンにちなんで、オールドコースで開催されてきた。昭和五十年頃は売名が目的の新設コースで開催されたこともあったが、大会の雰囲気に合わないとの理由でオールドコースに戻されてきた。

 観戦するギャラリーも、名門のオールドコース見たさに高いチケットを購入してやって来る。しかもオールドコースは距離が短い、その理由で、例えば川奈ホテルの富士コースは運営上の問題もあり、敬遠されている。しかし全体の距離が長ければいい、というものではない。短くて20アンダーが出ようと、その時のコンディションでスコアは変わるのだから、それはそれでヨシとするべきである。

 例えば名古屋の和合コースのように、300坪程度の小さな砲台グリーンは出場選手泣かせである。何も意図的に造形したわけではない。当時はツルハシと牛馬、モッコなどで造成している。今日のようにブルドーザーなど機械力はなく、やむを得ず土を崩せず、ありのままのグリーンや各ホールを造形してきた。それが自然なホールとして、今日まで残っている。

 日本オープンは自然と戦う姿を見せるのが本来の大会であるが、余りにも人工的なホールの多いコースでの開催は、今後控えて欲しいものだ。

 第二点は選手の闘う姿が見えないことだ。必死に戦っている選手は数人もいない。ボールもクラブも、パーシモン時代に比べると格段の差である。ストロークで言えば10打差の開きがある。パーシモンで戦っていた時代のスコアより10ストローク縮まってもおかしくない。

 アンダーパーの選手が五人では、話にならない。まして2ケタのアンダーパーは、優勝したアマの蟬川選手一人とは情けない。

 蟬川選手は初日64ストロークで首位に立った。二日目から崩れるだろうと思ったが、二日目はなんとかイーブンパーの70で踏ん張った。本戦の三日は上位が優勝争いに突入するので新人は崩れがちだが、幸運なことに同じ学生アマの組み合わせとなり、リラックスムードで63。トータル13アンダーと伸ばし、二位に6打差をつけた。

 日本オープンは7打差から逆転する場合があるので、最終日は伸び悩み、崩れるだろうと心配したが、なんとスタートから連続バーディを決め二位の比嘉選手に8打差をつけ「どうだ、参ったか」と言わんばかりのスコア。

 しかし9番ではスイングのタイミングが合わず、グリーンを外してトリプルボギーを叩くが、パットに救われ10アンダーで四日間完全逃げ切りの優勝を果たした。

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