緊急手記・水道橋博士の休職について思うこと(ノンフィクション作家・細田昌志)

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小さなことからコツコツと

 水道橋博士及び、所属するれいわ新選組に何ら問題がないとは、言わない。選挙を手伝った一人としては、猛省すべき点があることは指摘を俟たない し、「他の比例候補に議席を譲るべし」という主張に一理あることも重々承知している。

 しかし、当選から3カ月経って、彼はまだ何もなしえていない。プロ野球に喩えるなら、春季キャンプに参加して、疲労困憊となって自信を失った高卒ルーキーに「早く引退しろ」と迫るようなもので、そうした場合、首脳陣が強く慰留するのは至極当然だろう。映画『キッズ・リターン』風に言えば「まだ始まってもいない」のだ。

 今はとにかく休養してほしい。7月からの3カ月は多忙過ぎたと思う。そしていつか、心身共に取り戻す日が来たら、まずは、当初の公約である「国会の可視化」から着手したらいいのではないか。これだけでも国民にとっては、得難い情報開示にほかならず、彼が目指す「スラップ訴訟法」もそこからである。

 彼にとって芸人としての大先輩となる西川きよし元議員が初当選したのは、今から36年前の1986年。このときのキャッチフレーズは「大きなことは出来ません。小さなことからコツコツと」だった。やや、鼻白む想いで耳にしていた言句だったが、今回の問題に直面するに至って、筆者は大いに首肯した次第である。

細田昌志
ノンフィクション作家。1971年生まれ。放送作家としてテレビやラジオを担当しながら雑誌やWEBに寄稿。著書に『坂本龍馬はいなかった』(彩図社)、『ミュージシャンはなぜ糟糠の妻を捨てるのか?』(イースト新書)。近著『沢村忠に真空を飛ばせた男/昭和のプロモーター・野口修 評伝』(新潮社)が「第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞」を受賞。

デイリー新潮編集部

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