国防の要・岩国基地の周辺に上海電力がステルス参入のナゾ 複雑怪奇な転売スキームでメガソーラーを買収

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 日本の国土を買い漁る中国資本が自衛隊基地周辺のメガソーラーを取得した。「上海電力日本」に協力するのは複数の日本企業と政治家、ビジネスマン。我が国の安全保障を脅かす静かな“侵略”の実態を、日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏が告発する。

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 今年の5月11日、国会で経済安全保障推進法が成立した。同法は四つの柱で構成されるが、とくに「基幹インフラの安全性確保」は極めて重要だ。

 基幹インフラとは電気やガス、水道、通信といったライフラインをはじめ、金融、鉄道、運送といった国民生活の基盤となる分野のことだ。にもかかわらず、その安全性の確保と逆行する事態が国内で静かに進行している。中国系企業による巧みな試みで、その実態は“ステルス参入”というべきものだ。

 おそらく多くの読者はこの事実をご存知ないだろう。地上波のテレビをはじめ新聞などの大手メディアが、ほとんどこの問題を取り上げないからだ。そこで、日本の電力産業に浸透しつつある「上海電力日本株式会社」を例に挙げ、彼らが山口県岩国市に設置されたメガソーラー施設を取得した経緯と手法をひもときながら、我が国の経済安全保障が抱える問題点を解説したい。

「国家電力投資集団」とは

 中国の大手国有発電会社に「国家電力投資集団」という中央企業がある。中央企業とは、中国共産党の実質的傘下にある国務院国有資産監督管理委員会が監督・管理する企業のことだ。国家電力投資集団は中国における五つの主要な発電グループの一つで、世界最大の太陽光発電企業とされる。

 国家電力投資集団は13万人の従業員と62の子会社を抱えており、文字通りかの国のエネルギーの確保と安全保障という重大な使命が課されている。この傘下企業の一つが「上海電力股彬有限公司(以下、上海電力)」だ。上海電力は本社が置かれた上海市をはじめ、周辺の江蘇省や安徽省を中心に発電事業を展開している。主力は石炭火力発電だが、ガス、風力、そして太陽光での発電も手掛ける企業だ。

 同社は上海証券取引所に上場している。その主要株主と持株比率は、多い方から(1)国家電力投資集団有限公司(46.3%)、(2)中国電力国際発展有限公司(13.9%)である。中国政府と密接な関係を持つ2社が大株主として上海電力の経営権を有しているのだ。

 取締役会長に相当する董事長と共産党の要職に相当する黨委書記は胡建東という人物が務めており、この日本法人こそが前述した上海電力日本株式会社(以下、上海電力日本)に他ならない。無論、中国政府の実質的な支配下にあるが、日本の経済団体連合会(経団連)は会員として迎え入れている。

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