山口でくすぶり続ける「昭恵さん待望論」 林家に“シマ”を渡したくない安倍家支援者の悪あがき

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「終わったはずの話が突然ぶり返された。ウラで何かが起きているんじゃないかと騒ぎになっています」。こう語るのは、自民党山口県連の関係者である。安倍晋三元首相の国葬と県民葬は終わったが、衆院山口4区の後継候補はまだ決まっていない。さらにここにきて急に、一度は消えたはずの「昭恵さん待望論」が再浮上してきたのだ。

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毎日新聞の報道が話題に

 10月27日、政界関係者の目を引くタイトルが、Yahoo!ニュースのトピックス欄に載った。「『野心ある人より…』安倍氏後任に昭恵さん待望論 衆院山口4区補選」。毎日新聞・電子版の記事だ。

〈昭恵さんは10月15日に営まれた安倍氏の山口県民葬で遺族代表としてあいさつに立ち「主人は山口県が本当に大好きで、この下関・長門が大好きでした。私もこの地域のために、これから何かしら活動していきたいと思っています」と述べた。/県民葬に参加した安倍派議員からは、昭恵さんのあいさつを受けて「4区補選に出るんじゃないか」との声も上がった〉

 来年4月に行われる見込みの山口4区の補欠選挙に「出馬しない」と明言していた昭恵さんが、一転、前向きになったと読み取れるような書きっぷりである。だが、このすぐあとで、〈ただし、昭恵さん自身は既に7月の安倍派会合で立候補しない意向を示しており、政治家になることに強い拒否感を示しているとされる〉と打ち消しが入る。

 強い見出しも相まって、地元では「本当のところはどうなんだ」と混乱が生じているというのだ。

「しびれを切らした安倍家シンパが『昭恵さん待望論』を盛り上げるために書かせたんじゃないか、という声も飛び交っています」(前出・県連関係者)

決死の説得工作を準備していた

 昭恵さんが後を継ぐ気がないと公表した後、安倍家では、晋三氏の兄・安倍寛信氏(元三菱商事パッケージング代表取締役社長)や弟の岸信夫・防衛相の子息から後継を出す案が検討されてきた。だが、本人たちは政界入りを頑なに拒否。この間、地元のシンパたちは安倍家の出方をじっと静観していた。だが、このままでは安倍家が断絶しかねないと、葬儀が終わるのを待ってから、昭恵さんに秋波を送り始めたというのだ。

 10月15日、下関で県民葬が営まれた後の食事会でも、一部の後援会メンバーが「最後の直訴」に打って出る準備をしていたという。

「“どうか晋三さんの遺志を継いでください”と説得しようと構えていたようです。ただ、実際の食事会では傷心の昭恵さんを前に、そんなことを切り出せる空気にならず、口に出せないまま終わってしまったんだとか……」(同)

 そもそも、なぜ地元では「昭恵さん待望論」がくすぶり続けるのだろうか。

 背景にあるのが、10増10減の衆院小選挙区の区割り改定問題である。山口県の選挙区は現行の4から3に減り、安倍氏の選挙区だった下関を中心とする現4区は新3区となる見込みだ。もともと下関は、現3区から選出されている林芳正外務相の地盤。安倍家が断絶してしまえば、林家に“奪還”されてしまうと言われている。

「両家は仲が悪い。林家に“シマ”を奪還され、これまでの既得権益を失ってしまうことを、安倍家から恩恵を受けてきた支持者たちは恐れている」(同)

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