ポイントビジネスの元祖「ブルーチップ」の60年 ベトナムで豆腐販売、移動スーパーも

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任天堂の花札

「日興証券の人脈も利用しています。日興証券の多くの社員がブルーチップスタンプの営業に協力し、彼らの取引先であった小売業者に加盟してもらいました」

 ところで、ブルーチップスタンプは、どのようなビジネスモデルなのか。

「小売業の販売促進の為のスタンプシステムです。スーパーなどの小売り業者にスタンプを販売します。スタンプは、顧客が集めて商品と交換されるまで、半年、1年、3年と時間がかかります。その間にスタンプで得た資金を運用するのです。生命保険などと同じです」

 ス―パーなどは販促効果を上げるために、スタンプ3倍セール、10倍セールを実施した。

「10倍セールになると、お店にはどっとお客さんが押しかけます。ブルーチップスタンプは、金額を入力すると、それに見合ったスタンプをカットする機械がレジに置かれていました。10倍だと、すごい量のスタンプが出てくるので、視覚的にも効果がありました。今のポイントは量感を伝えにくいので、スタンプの方がわかりやすかったと思います」

 ブルーチップスタンプで、どんな商品と交換したのか。

「これまで最も多く交換されたのは、任天堂の花札です。スタンプ500枚(当時)で交換できます。交換した人は一人もいませんが、創業時のカタログには自動車の景品もありました」

 ブルーチップスタンプの業績がピークだったのは、1970年代から80年代だった。

「高度成長期で金利が7~8%もありましたから、かなりの運用利益が出ました。70年代になると、国内だけでなく、海外にも投資。74年には、ハワイで高層分譲マンションを建設、販売しました。77年には米国の世界最大のスタンプ印刷会社『アライドスタンプコーポレーション』の全株式を取得しています。社員はピーク時で千数百人はいましたね」

 ところが、1990年のバブルの崩壊で、景気が低迷。金利も下降していった。それと合わせ、スーパーマーケットの台頭や大型店舗の進出により、スタンプの販売先であった多くの個人商店や商店街の閉店や廃業が相次ぎ、事業の転換を検討せざるを得なくなりました。

 1995年からは、ブルーチップカードに主力を置き、スーパーマーケットをターゲットにスタンプ事業のスキームを活かし継続を図っている。

「250ポイントたまると、ブルーチップギフト券をお渡しします。従来のブルーチップスタンプは1冊に500枚が貼れたので、その半分というわけです」

 2000年に社名をブルーチップに変更、ポイントカード事業を始める。とはいえ、ブルーチップの名が入ったカードはほとんど見かけないような気もするが……。

「ポイントカードには、スーパーや商店街の名前を入れますので、ブルーチップとは入っていません。うちは、スタンプと同じように、小売業者の販売促進システムとしてポイントを販売するだけです。現在お取引頂いている加盟店は約400社、7000店舗以上となっています」

 さらに新事業も展開している。2013年からは、ベトナムで「ドラえもん豆腐」の製造販売事業をスタートさせた。現在もベトナムではドラえもんが大人気だという。そこでドラえもんをコラボさせ、「ドラえもん豆腐ファクトリー」という製造販売を行っている。

「2014年からは、移動スーパー『とくし丸』を展開しています。高齢化社会を迎える中で、全国に700万人と言われている買い物難民のために、食材を提供しています。最近では、この10月から、ローリングストック(食品の備蓄)のために『ユニー』で乾燥野菜を販売しています。昔のように運用益が出た時代ではないので、事業の多角化を行っています」

 懐しいブルーチップスタンプは、まだ販売しているのか。

「売り上げの1%にも満たないものの、全国で食料品店や化粧品店、米屋などの個人商店に販売しています。未だにスタンプをカットする古い機械をレジに置いていますよ。お客さんの中で、スタンプを愛用している人がいるのでやめられないのだそうです。実は、スタンプを印刷していたアメリカの印刷会社が20年前に廃業となりました。それで廃業前に大量のスタンプを刷ってもらいました。まだその時の在庫が残っているのです。いつになるかはわかりませんが、在庫がなくなった時点でブルーチップスタンプは終了となります」

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