「エンタの神様」「マジカル頭脳パワー」「SHOW by ショーバイ」…名物プロデューサーが明かすヒット番組の作り方

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日テレを常勝集団に変えた立役者の1人

 最高視聴率が30.0%を記録した「投稿!特ホウ王国」(1994~96年)も五味氏が企画・演出した。

 ウッチャンナンチャンが編集局長役となり、視聴者から投稿された「おもしろ仰天スクープ」を紹介する形式の番組だった。司会役は笑福亭鶴瓶(70)と河野景子(57)が務めた。

 視聴者が情報提供する番組は今もいくつかあるが、先駆けはこの番組。どうして思いついたのだろう。

五味「まず単純に『日本一体重がある小学生を見てみたい』、『日本一背の高いおばあちゃんはどんな人なのか知りたい』などと思ったんですよ。だけど、複数のリサーチ会社に協力してもらっても、そんな小学生やおばあちゃんを探し出してもらうのは無理かも知れない。一方で視聴者の方たちに投稿記者になってもらい、賞金を出す形にして情報を集めたら、探し出せるかも知れないと思ったんです」

 リサーチ会社ですら難しいことも、約1億3000万人の国民の協力が得られれば可能になると考えた。

五味「番組をつくる時にはインフラ(番組をつくるための基盤)的なものから考え始めます。自分の思い描く番組や理想に近づけるためにはスタッフの陣容をどうするかとか。投稿という形を思いついたのも同じことなんです。スティーヴン・スピルバーグ監督ら優れた人たちが作品をつくる時も同じかも知れません。みんなの見たことのない映像をつくる時、まず自分のイメージをどうやったら具現化できるのかを考えると思います。スタッフから最新のCGに関する情報を得るとか、インフラ的なものから始める思うんです」

 2001年に編成局企画部長に就くと、最高視聴率23.5%(第1シリーズ)の連続ドラマ「ごくせん」(2002年)を「仲間由紀恵さんを主役で」と現場に伝えた。

五味「極道の孫娘が教師になり、体を張って生徒を守るというコンセプトを守っていくよう指示しました」

 この的確な指示によりドラマは大ヒットした。

 五味氏は2003年に始まり、最高視聴率22.0%をマークした「エンタの神様」のプロデューサーと総合演出も担当。テレビ界内では「視聴率100%男」とも呼ばれるが、それもうなずける。

 1990年代の日テレ快進撃を編成担当役員として陣頭指揮し、2001年にプロパー社員として初の社長に就任した萩原敏雄氏(86)の懐刀でもあった。萩原氏からのダイレクトな指示で動いたことも少なくなかった五味氏は振り返った。

 五味氏は日テレを常勝集団に変えた立役者の1人なのである。

※後編「サンドウィッチマンのコントを完成させた名物プロデュ―サーの述懐 番組作りは“お笑い”が一番難しい理由」へ続く

五味一男(ごみ・かずお)
1956年、長野県生まれ、早大を中退し、日大学芸術学部へ。同大卒業後、東映を経て、1987年に日本テレビに入社。「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」など数々の高視聴率番組を手掛けた。2007年、同社で史上最年少の50歳で執行役員に。その後、直系制作会社・日テレアックスオン副社長などを歴任。著書に『ヒット率99%の超理論』(PHP研究所)など

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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