110番映像通報システムの課題は? 専門家は「都合のいい映像を送る人がいるかも」

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 交通事故を目撃した通行人が110番にスマホで通報。すると、電話の向こうの担当者が「現場の映像を送信できますか」と聞いてくる。了解するとSMSでURLが送られてきて、通報者がアクセス。担当者が伝える4桁の暗証番号を入力すると撮影が始まる。こんな「110番映像通報システム」の試行を警察庁がスタートしたのは10月1日のことだ。

 警察庁の担当記者が言う。

「このシステムは現場の状況を素早く把握し、初動捜査の効率化や正確性向上につなげるために導入されたものです。通報者から通信指令室にリアルタイムで送られた動画(ないし静止画)は、現場に向かう警察官の端末に送信され、交通事故や傷害、ひったくりといった犯罪の捜査で活用できる。同じようなシステムは一昨年から兵庫県警が導入しており、傷害事件などで一定の効果があった。そこで警察庁が正式に入札に付し、パナソニックのグループ会社が昨年11月に落札して開発を行ってきました」

課題は?

 だが、気になることもある。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が言うのだ。

「世間にはヤジ馬のように事件現場に首を突っ込んだり、承認欲求から映像をあちこちに送り付ける人がいます。また、あおり運転では、一方的に被害者だと主張して都合のいい映像を送る人もいるかもしれません。システムの運用の初期には、そうしたノイズのような人たちが出てくるもの。警察はどれほど想定しているのでしょうか」

 あるいは放火事件で、愉快犯が自ら火をつけて映像を送ってくる、なんてことはないのだろうか。

 警察庁に聞くと、

「映像の送信は110番通報を受理した担当者が依頼を行ってから初めて可能となるので、同担当者において不適切と認めた場合は映像の送信がされることはありません。また、110番通報があれば、ただちに警察の初動活動が開始されることは明らかであり、犯罪活動を行った者が自ら110番通報をすることは一般的には想定しづらいのではないかと考えます。従って、お尋ねのようなことはないと考えております」(広報室)

 ユーチューブを見れば分かるが、ネット上に溢れる動画はカオスそのもの。そこに住む住人たちが、全て「良き市民」であればいいのだが。

週刊新潮 2022年10月13日号掲載

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