地元警察が365日24時間体制で監視した筑波大留学生の“危ない素性” 元公安警察官の証言

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、茨城県警が筑波大学留学生を監視した話について聞いた。

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 勝丸氏は、かつて公安外事1課→公安部外事警察で、大使館や総領事館との連絡、調整役を行っていた。今回ご紹介するのは、その時に経験した話である。

「今から10年近く前ですが、中央アジアのある国の大使館から急ぎの話があるので来てくれないか、と連絡がきました」

 と語るのは、勝丸氏。

五十嵐助教授殺害犯は筑波大学留学生

「大使の話によると、イスラム過激組織の『ウズベキスタン・イスラム運動(IMU)』のシンパ(信奉者)が筑波大学に国費で留学したというのです。そこで、本国から留学生を監視して欲しいと連絡が入ったといいます。大使は『テロ組織のシンパをなぜ留学させたんだ』と怒っていました。本国の外務省は、身元を調べずに留学させてしまい、後からIMUのシンパであることが判明したそうです。かといって大使館が留学生を監視することができないので、大使は困り果てていました」

 IMUはトルキスタンに国家を樹立することを目的として1998年、ウズベキスタン人のタヒル・ユルダシュとジュマ・ナマンガニによって創設された。

 同年、ウズベキスタン政府に「ジハード(聖戦)」を宣言し、1999年2月、首都タシケントでカリモフ大統領暗殺未遂事件を起こした。その年の8月には、キルギスで鉱山を探査していた日本人技師4人を誘拐。2カ月後に解放している。

 国際テロ組織のアルカイダとも繋がりがあるとされ、かなり危ない組織であることは間違いない。

「2001年にIMU創設者のナマンガニが米軍の攻撃を受けて死亡しています。アメリカを敵対視しているので、日本の米国大使館も攻撃の対象になる可能性もありました」

 頭を抱える大使を見かねた勝丸氏は管轄の担当者と会い、その留学生について説明した。

「管轄の担当者に話を持って行きました。担当者は、『そんな人物がまた留学しているんですか』と驚いていました。どうやら1991年7月、イギリスの作家ラシュディ氏が書いた小説『悪魔の詩』を日本語に翻訳した五十嵐一助教授が、筑波大学で首や腹部を何カ所も刺されて殺害された事件を思い出したようでした」

 五十嵐助教授を殺害したのは、筑波大学に短期留学していたバングラデシュ人と言われている。

「バングラデシュ人は、遺体が発見された当日の昼の便で成田から帰国しています。警察は、バングラデシュの日本大使館を通じて、現地の警察に協力を要請しましたが、ほとんど協力してもらえなかったため、2006年7月、公訴時効が成立しました」

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