独占インタビュー 分断危機の「神社本庁」トップが語った「内紛の真実」

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驚きと戸惑い

田中総長(以下、田中) 今回の騒動について、これまでいろいろな人がいろいろなことを言っていますが、私自身の声で、何が起こっているのか、きちんと皆様に伝える必要があると思い、機会をうかがっていたところでした。

 5月28日の臨時役員会は、いまだに驚きしかありませんし、芦原理事の動きについても、戸惑っています。5月の役員会では、もう一度役員会を開いて新たな総長を決めるという結論になったのに、6月6日に、芦原氏が総長に就任したとして変更登記申請を秘密裏に行った。間一髪で登記変更を止めることはできたものの、本来、変更登記の手続きは、担当部署である神社本庁の総務部が行うものですよ。

――それを芦原理事が行ったと。

田中 そういう動きがあったのは事実です。本庁の役員という指導的立場にある神職がそこまで強引な方法をとるとは夢にも思わなかったので、とても驚きました。ちなみに今回分かったのですが、登記申請は、書類さえ整っていれば、誰が申請してこようと、法務局は受けざるを得ない。神社本庁が仮処分を申し立てなければ、6月中旬頃には登記上は芦原理事が代表役員総長になっていた。そういうことも熟知した上での動きだったと思います。

なお在任

――そんな経緯がありながら、6月23日に次の臨時役員会を迎えた。

田中 その時も話し合いはまとまりませんでした。前回と同様、統理は、「芦原氏が次の総長にふさわしい」と仰って、その一方で役員の過半数は、私の再任という意見でした。ここで問題となるのが、総長を選ぶ際のルールが書かれた庁規(神社本庁の規則)なのです。「総長は、役員会の議を経て、理事のうちから統理が指名する」となっている。この文言の解釈が、今問題になっているわけですが、役員会の議、つまり役員会の議論と議決を経て、私が再任される運びとなったのに、統理は私を指名しない、と。拒否をされたというわけです。

――ということは、現在総長は空位となっているのか。

田中 いえ、これも庁規に定めがあるのですが、後任が決まるまでは、前任者がなお在任するとなっておりますので、私が総長ということです。法人の代表役員である総長が不在だと、組織としての決裁ができませんから。

――一方の鷹司統理側は、芦原理事が総長になったと主張している。

田中 そうです。統理側は、例のルールを、「役員会の多数意見がどうであれ、統理の意見によって選ばれる」という風に解釈しているというわけです。芦原理事は8月に自らが総長であることの確認を求める訴訟を提起しましたので、今後は、この解釈をめぐって、裁判で争われることになります(※9月29日の第一回口頭弁論で結審)。宗教法人の代表である総長を誰にするかということを、宗教団体の代表である統理の一存で決めていい、というのは庁規の趣旨にそぐわないと思っています。宗教法人として、役員会の議決に意味がないというのは、やはり考えづらいのではないでしょうか。

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