アントニオ猪木さんが告白していた、難病「心アミロイドーシス」との闘い

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隠れた罹患者

〈 猪木氏が言うように、専門家も、今後、心アミロイドーシスの患者数は、検査の普及によって増えると予測している。

 今年3月、日本循環器学会などが策定した心アミロイドーシスの診療ガイドラインには、実数は示されていないが、現時点では《100万人あたり6・1人と推定される》。このガイドライン策定にたずさわった、高知大学老年病・循環器内科教授の北岡裕章氏がこう語る。

「心アミロイドーシスの患者さんはご高齢の方が多く、いままでは精密検査を行う負担が大きすぎました。従来の検査は心筋生検といって、カテーテルを使って心臓の組織を採取し、アミロイドを確認していたのです。しかし近年は、放射性医薬品を注射で投与する核医学検査でかなりの確率で疑うことができるようになってきました。この検査方法はまだ保険適用外ですが」

 適用されれば、隠れた罹患者が把握でき、患者数は万単位まで増えることが考えられるという。これによって対処・予防を行えば、心不全による死亡を抑えられるかもしれない。

「現在、日本国内には100万人を超す心不全患者がいるとされ、今年は120万人に達すると推計されています(註・がん患者も約100万人)。それだけ多くの心不全患者が入退院を繰り返しているのです。医学の世界ではこの問題への関心が非常に大きいのです。心不全患者のうち心アミロイドーシスと判明した患者さんは、猪木さんと同じようにビンダケル服用で進行を抑制することができるかもしれません。ビンダケルは2年前に海外で、ご高齢の方に多い心アミロイドーシスに効果があることが分かり、日本でも昨年から保険が適用されています。まずは、正しい診断が大事ですので、心不全の患者さんは専門医を受診されることをお勧めします」(同)

 心臓の不調で悩む人々のうち一定数に起こり得る心アミロイドーシスの進行を、ビンダケルの服用で止められる。猪木氏の告白は、そんな事実を世に知らしめる意義もあるのだ。なお、懸念のある方は日本循環器学会が公表している「ビンダケル導入施設・医師認定」の一覧を参照いただきたい。全国の大学病院など80カ所の施設で約100人の医師がこの薬剤を扱っている。

 ところでビンダケルの薬代だが、厚労省の難病指定により患者の自己負担額にも補助を受けられる。厚労省に訊ねると、

「ビンダケルはファイザー株式会社から発売されています。今年4月時点の価格が1錠4万3672・8円ですが、15年1月に難病指定された心アミロイドーシスでは保険が適用され、自己負担は2割。年収で決まる市町村民税の課税額により、負担額には上限があります。年収80万円以下の方は月2500円、年収810万円以上になっても月3万円です」

 患者は最高で年36万円支払えばいいわけだ。さて、最後に猪木氏の話に戻るが、その口調は“いつ何時、誰の挑戦でも受ける”と言わんばかりに滑らかになった。〉

 心アミロイドーシスのおかげでまだまだ自分にムチを打たなきゃいけないけど、変わったことがある。体重を気にするようになりましたね。朝と夜、体重を測る。まあ、その変化が心臓や体調にどう影響するかは分からないけど。

 いまは2キロ増えただけでも体が重たく感じるんです。これまでは2キロなんてどうってことなかったのにね。幸せなことに、友人や関係者、みんながご馳走を用意してくれるから、残したら悪いと思って食べすぎちゃう。すると2キロくらいすぐ増えるじゃないですか。病気が分かるまでは、全盛期は3キロくらいの肉を食べていたけど、ヒレ肉をちょっとつまむ程度になりました。

 これからは食事面も厳しく管理して、付き合いも控えるように心掛けなくてはいけません。最近は私の病気を知っている人が増えてきたのと、コロナもあって会食には行かずに済んでいるね。妻を亡くして一人だから、食事は事務所関係者が用意してくれる。サラダと適当なおかずが多い。炭水化物はほとんど摂らないかな。やっぱり肉を食べたくなるときもあるけどね。

 みんなは私に、「100歳まで生きてください」と言う。100歳まで元気に生きられればいいけど、それだけを目標にするのではなく、どう生きて、考え、どのように行動できるかが重要です。元気にしていれば心のリハビリにもなる! 私自身の心のリハビリとしての目標の一つは、世界のごみをきれいにしたいということ。

 また猪木が大風呂敷を広げていると笑われるかもしれないけど、これからは環境問題や汚染問題に取り組んでいきます。まだまだ、「元気ですか!」の精神でアミロイドを倒しますよ!

デイリー新潮編集部

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