テドロス氏は「ゴールが見えてきた」と言うが…次のパンデミックに備えは不十分、何をすべきか

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「米国の研究所」の可能性も浮上?

 昨年後半、米ネットメディアの情報公開請求が実を結び、米国立衛生研究所(NIH)が多額の資金を出して、中国の武漢ウイルス研究所でSARSウイルスの「機能獲得実験(感染力などを高める実験)」を実施させていたことが明らかになった。新型コロナの発生に米国政府が関与している可能性が浮上したことから、米共和党は議会で真相の究明を再三求めているが、米国政府は協力する姿勢を見せていない。

 その後、新型コロナの発生源への関心はめっきりと下がってしまった感が強いが、世界的に権威が高い英医学誌「ランセット」傘下の新型コロナの発生源究明に関する委員会は14日、2年間に及ぶ調査を踏まえ「新型コロナが研究所で改変されたウイルスである可能性は排除できない」との見解を正式に表明した。

 ランセットの委員会はパンデミック初期に「新型コロナは自然発生した」との見解を出していたが、武漢ウイルス研究所との関係が深い委員長(エコアライアンスのピーター・ダザック氏)が解任され、著名な経済学者であるジェフリー・サックス氏に代わってからは「研究所からの流出した」説を唱えるようになっていた。

 今回出された報告書で注目すべきは「独立系研究者は新型コロナのようなウイルスを操作する作業に携わった米国の研究所を調査することができないでいる。NIHは自らが支援する新型コロナに関係するウイルス研究の詳細の開示を妨害している」と批判した上で、武漢ウイルス研究所だけではなく、米国の研究所で新型コロナが発生した可能性にまで言及している点だ。

 ウイルスの機能獲得実験は世界中の研究所で実施されているが、その実態はブラックボックスだと言っても過言ではない。この問題に切り込まない限り、次のパンデミックを未然に防ぐことはできないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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