テドロス氏は「ゴールが見えてきた」と言うが…次のパンデミックに備えは不十分、何をすべきか

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いまだ特定されていない発生源

「パンデミックを防止するため、WHOの権限を強化すべきだ」との議論が出たものの、米国や中国などは公衆衛生政策を自国で管理しようとする姿勢を崩していないからだ。各国は新たな国際ルール「パンデミック条約」の成立を目指しているが、まとまるのは早くても2024年以降だ。

 最も深刻な問題は新型コロナの発生源がいまだに特定されていないことだ。新型コロナに類似するSARSの発生源(ハクビシン)やMERSの発生源(ヒトコブラクダ)が早期に特定されたのにもかかわらずに、である。

 新型コロナについては(1)武漢の市場で売られていた野生動物(自然宿主)から人に感染した説と(2)武漢ウイルス研究所から流出した説が有力だ。

 新型コロナの発生源の解明は次のパンデミックでの迅速な初期対応に欠かせないことから、WHOはその解明に努めているものの、有している権限があまりに小さいことから、壁にぶつかっているのが実情だ。

 WHOは今年6月、新型コロナの「初期報告書」を公表したが、「カギとなる情報がまだ欠けており、さらなる調査が必要だ」と記述するにとどまった。WHOは加盟国の同意がなければ現地調査ができないため、調査に非協力な中国から十分なデータが得られないことが災いした形だ。

 米情報機関も昨年8月に新型コロナの発生源に関する報告書を公表したが、「中国から十分なデータが得られないことから明確な結論を出すことができない」としている。

 WHO内では懸命な調査にもかかわらず自然宿主が見つかっていないことから「研究所から流出した可能性が高い」との見解が有力になっている。テドロス事務局長も「個人的見解として研究所からの流出説を支持している」と述べている。

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