「終活? 興味がないわ」 101歳のピアニスト・室井摩耶子が明かす、100歳を超えても元気な理由

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 100歳を超えても元気に生きる人々――。彼らの生活習慣や人生哲学には、「百寿の奥義」が詰まっているといえるだろう。日本最高齢のピアニスト・室井摩耶子さん(101)へのインタビューから見えてきたものとは。【井上理津子/ノンフィクションライター】

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 世田谷区内の住宅街にある、一人暮らしのご自宅に伺った。玄関ドアを開けると、広々としたリビングルームに直結。鍵盤蓋が開いたグランドピアノ2台が目に飛び込み、テーブル、デスク、戸棚などの上にはたくさんの楽譜や本、書類などが無造作に積まれていて、まさに「現在進行形」の空間だと見てとれた。

「この家、89歳の時に建て替えたんですよ。何年くらい住めるかしら、なんて考えもしなかった。そんなことより、目の前の生活を楽しみたいと思いましてね。年をとると平屋に暮らす方がいいと皆さんおっしゃいますけど、この家は2階建て。毎晩いい景色を見ながら寝るのが長年の夢だったので、寝室を2階にいたしました」

超人ぶりを表す強烈エピソード

 室井さんがそう語る傍らから、20年来のマネージャー、志風敦雄さんが「他人と比べない。世間の常識に全くとらわれない。“超人・マヤコさん”です」と言う。

 超人ぶりを表す強烈なエピソードの一つがこう。

 90代の時だ。家の近くの路上で転んでしまった。

 しばらくして通りかかった知らない人に、「ちょっと助けてくださる?」と声をかけて起こしてもらうまで、そのまま路上に寝ていたのだという。自分で起き上がろうとして、再び転んではいけないと思ったからだが、無事に帰宅後、「路上から景色を眺めるって、貴重な経験ができちゃった」と話した。いやはや大物である。

 室井さんが続ける。

「100歳を超えても元気なのはなぜかと尋ねられることが増え、私なりに理由を考えて、分かったんですよ。便利な『頭陀袋(ずだぶくろ)』をいつも心に持っているからだと思います」

 えっ? 頭陀袋を? と返すと、室井さんは言葉を尽くしてくれた。

 頭陀袋とは、僧侶が托鉢の時などに首から提げている袋。転じて、なんでも入る袋のことだ。「面白い」と思ったことや、嫌なことを頭陀袋の中へ。喜怒哀楽全部をしまい込む。いつしか嫌な気持ちはすっかりなくなり、嬉しいことや楽しいことは気分だけ残る。やがて発酵したそれらを必要な時に取り出す。そうした循環が心の健康につながっていると自己分析。

「ピアノを弾くときも、頭陀袋の中で熟した感情が表現を手助けしてくれます」

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