五輪汚職事件のウラに「特捜部VSマスコミ」の暗闘 死刑執行と同日に「高橋治之容疑者」強制捜査は異例中の異例

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何かしらの力が……

 まず象徴的だったのが、一連の事件を巡り特捜部が初めて強制捜査に乗り出した日だ。7月26日午前、紳士服大手「AOKIホールディングス」側から5100万円の賄賂を受け取ったとの受託収賄容疑で特捜部は、高橋容疑者の東京・世田谷の自宅などの捜索に着手した。実はこの日の早朝、秋葉原無差別殺傷事件で17人を殺傷した加藤智大死刑囚(39)の刑が東京拘置所で執行されていたのだ。

 通常、法務検察では、特捜部が強制捜査に乗り出す場合、検察内のみならず、事務次官や刑事局長ら法務省の幹部にも報告が上がり、捜索や逮捕といった捜査日程の調整が行われる。もちろん、死刑執行の「Xデー」は、ごく数人しか事前に把握していないため、法務省側から直接的に「死刑執行があるからこの日は強制捜査を避けるように」といった指示が出ることはまずない。だが、これまでは暗黙の了解として死刑執行日に大事件の強制捜査が重ならないよう配慮されてきたのが実情だった。

 そもそも、死刑執行は年間数回あるかどうかで、難しい捜査を強いられる特捜部が強制捜査に着手するのも年間数件しかない。それが今回に限って同日に実施されたというのは、こちらも「マスコミかく乱」を目的に何かしらの力が働いたと考えても不思議ではないだろう。

あえて別々に

 特捜部は、読売新聞が7月20日に疑惑を報じてから1週間もたたない26日、死刑執行日に重ねるように強制捜査に乗り出すと、翌27日 には贈賄側のAOKIホールディングスの青木拡憲前会長(83)宅などを家宅捜索。28日にはAOKI本社、そして翌29日 も広告会社「ADKホールディングス」など関係先の捜索に踏み切り、「4日連続で捜査 」という異例の手法を取った。

 ある大手新聞社デスクは

「あの規模の捜索と特捜部の人数からすれば、4日に散らす必要もなかったはずだ。マスコミにキャッチされないよう、あえて捜索を4日別々にしたのだろう」

 と推測する。

 一連の事件では、スポンサー企業だったAOKIルートで5100万円、KADOKAWAルートで7600万円が立件されたが、このほかに、スポンサー募集業務を担った大広からも約1400万円の賄賂が高橋容疑者側に提供された疑いがあり、特捜部は資金提供の経緯や趣旨の解明を進めている。

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