五輪汚職事件の最中に「バッハ詣で」、JOC「山下康裕」会長に大義はあるか

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無責任

 日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が8月30日、定例会見を行い、東京2020組織委員会の高橋治之元理事の逮捕や、2030札幌冬季五輪招致について語った。

 産経新聞はこう伝えている。

《札幌市が目指す2030年冬季五輪招致を再考する可能性について、「そういう考えは持っていない。最後まで丁寧に説明しながら、全力を尽くす」と話した。招致活動は地元の支持の伸び悩みが課題で、「状況は楽観できない」と認識を述べた。東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件の影響も危惧され、「透明性を確保しながら、同じことを繰り返さないように活動していく必要がある」と強調。そのための具体案は「検討中」とするにとどめた》

 またデイリースポーツは、『「(開催への支持率向上に)特効薬のようなものはない」と述べた』と報じている。

 何と無責任で、実のない発言だろう。

「同じ過ち」をどうしたら防げるか、核心を認識しているとは感じられない。山下会長自身が「過ち」の一翼を担っていた自覚もない、まるで他人事として語っている。

疑念と反感

 なぜ汚職事件が起こったか? 取材者の私にさえ簡単な原因がひとつ指摘できる。それは「高橋治之容疑者を組織委員会の正式な理事に起用したこと」だ。山下会長なら、高橋容疑者の理事就任にストップをかけることができたはずだ。招致活動の際に、約2億3000万円もの招致資金が高橋容疑者の会社を通じてシンガポールのブラック・タイディング社に送金された事実は、フランス捜査当局が明らかにした。2016年5月の参議院文教科学委員会で松沢成文議員(当時)が、こうした疑惑のある高橋容疑者が理事でいる妥当性について問うた際にも、組織委員会は「高橋理事」を守るだけで、改めて調査・検討もしなかった。つまり、組織的に黙認、容認した。このような見識の山下会長が変わらずJOCトップにいるスポーツ界が「透明性を確保」できるはずがないだろう。

 JOCは調査委員会を作って、「2億3000万円の送金」に違法性はなく潔白と結論づけた。JOC竹田恒和会長(当時)も高橋容疑者も、送金の事実は認めている。だが一貫して「コンサルティングに対する正当な報酬だ」と主張している。私たちはその先が知りたい。

「オリンピック招致というのは、一コンサルティング会社に2億円以上もの報酬を払う必要があるほど、謎の多い、そして途方もなく巨費のかかる事業なのか?」「もしそうなら、オリンピック招致などもうやめてほしい」というのが多くの国民の気持ちだ。その思いにまったく応えようとせず、2030札幌五輪招致を進める姿勢に、国民はますます疑念と反感を募らせている。そういう当たり前の感情さえ、山下会長は理解できないのだろうか?

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