「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”

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 東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で新展開である。贈賄容疑で逮捕された「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者(83)が、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相(85)に現金200万円を手渡していた疑惑が浮上したのだ。もしこれが賄賂として認定されれば、捜査はいよいよ元首相にまで及ぶことになるが……。

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朝日、読売は静観

 疑惑を最初に報じたのは9月1日付の産経新聞である。青木容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、病気療養中だった森氏へお見舞いとして現金200万円を2回に分けて直接手渡したと供述していると報じた。同紙の取材に対し、森氏は「(現金の受領は)一切ありません」と回答している。

 この報道が出るや共同通信、TBS、東京新聞はすぐさま追いかけた。さらに週刊誌系のネットメディアも追随したため、たった1日でネット上は五輪汚職がいよいよ大物政治家へという盛り上がりを見せたのである。

 だが、特捜部を日々取材し続けている記者の間では決してそんな緊迫感はないという。

「森さんが否定しているとはいえ、渡した当人が話しているわけです。いかに組織委がカネにみまれていたかがより一層浮き彫りになったことは確かです。ただし、これが事件として立件されるかどうかは分けて考えなければなりません。実際、産経の報道を全社が追いかけているわけではない。朝日、読売などは静観しています」(司法記者)

200万円で森氏が動かせるのか

 産経の報道によれば、現金の授受は森氏が会長の頃だった。組織委の理事や会長は「みなし公務員」と規定されており、贈収賄が成立する条件はクリアしている。だが、これだけで立件は難しいというのだ。

「本当にお見舞いと言って渡しただけならば厳しい。青木容疑者が『スポンサーに選定してください』などの文言を添えて依頼していたとか、その証拠があるかが重要になってきます」(同)

 200万円という金額も微妙だという。

「もちろん、賄賂の趣旨が明確であれば額が少なかろうが立件できます。ただ、200万円は森さんを動かせるほどの大金と言えるのか。受け渡し方も重要になってきます。お代官さまにこっそり渡すようなやり方ならば怪しいとはなりますが、『見舞金です』と堂々と渡していていただけならば、お見舞いという趣旨として押し通せてしまう」(同)

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