女優・石山蓮華が語る「電線偏愛」 絡まる電線に息づく「生活臭」と「艶めかしさ」

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 普段は気にも留めないが、街中に溢れ、日常の風景に溶け込む「電線」は、日々の生活を支える重要な社会インフラだ。電線に魅了され、見上げるたびに「癒される」という芸能界随一の“電線ラバー”が語る、その魅力と偏愛の歴史とは――。

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「心奪われる電線を探しに、これまで東北や沖縄など日本各地にとどまらず、香港やタイなど海外にも足を運びました。私の場合、街中で複雑に絡まり合った電線を見ると、その奥に息づく人々の生活や街の鼓動などが感じられ、見飽きることがありません」

 こう目を輝かせて話すのは、テレビや舞台などで活躍する女優の石山蓮華さん(29)だ。いままでに撮った電線写真は1万5000枚超。約6年前にインスタを開設して以降、カメラを片手に街中を散策し、気になる電線を見つけてはシャッターを切ってきたという。

「最初の頃は風景の一要素として撮っていましたが、徐々に風景はそっちのけで、電線をズームで寄って撮るようになりました。整然と架かっているものもカッコイイのですが、ゴチャゴチャと錯綜した電線が特に好き。まるで生き物のように躍動感があって、つい足を止めて眺めてしまいます」(石山さん)

 そんな“電線愛”が認められ、今年6月、石山さんは日本電線工業会の初代「電線アンバサダー」に就任。任期は2年で、電線の魅力などをPRする傍ら、最近は社会とインフラに関する勉強にも取り組み始めているという。

赤羽の昭和風情の電線が原体験

 普段、目にする電柱間に架けられた電線には電力用と通信用の2種類があり、一般的に電柱上部に架けられたものが電力、その下の細いケーブルが通信用という。

「注目されることの少ない電線ですが、街中に電気を運ぶ送電線や配電線は“血管”で、情報データを送る通信は“神経”に相当し、私たちの日々の営みには欠かせない社会基盤です。子どもの頃はSFが好きで、漫画だと萩尾望都さんや竹宮惠子さんの作品を、アニメだと『攻殻機動隊』や『新世紀エヴァンゲリオン』などに親しんできました。その影響か、昔から電線を単なる無機物と捉えられず、見るとイメージが広がる触媒のような存在でもありました」(石山さん)

 小さい頃から「陰キャでオタク気質だった」と話す彼女が、電線に惹かれたキッカケは小学3年生の時に遡る。

「実家は埼玉ですが、当時、父の仕事場が都内北区の赤羽にあって、週3くらいで赤羽に通っていました。当時の赤羽は入り組んだ路地や飲み屋街が多くあって、いまと比べても昭和の面影が強く残っていた。そんなレトロで猥雑なエリアを父と一緒に散歩していると、頭上の電線が“絡まるツタ”のように活き活きとしたものとして目に飛び込んできて、“カッコイイ”と瞬間的に思ったのです」(石山さん)

 以降、外に出歩くときには自然と空を見上げる癖が付くようになったという。そして15歳の時、石山さんが「電線沼」にどっぷりとハマる転機が訪れる。

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