最近、聞かない「フラッシュモブ」 ブームは下火でも、結婚式を盛り上げ、ダンサーの生活を支えていた

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ヒット曲がフラッシュモブの需要に繋がる

 また、柴田さんは「フラッシュモブと一概に言っても、さまざまな役割がある」と付言する。

「踊るだけのダンサーに加え、振り付けを行うダンサーもいます。すでに振付のある曲であれば新しい振り付けを考える必要はないのですが、依頼者から『この曲でフラッシュモブがしたい』などのリクエストがある際は、それに応じて振り付けを考えなくてはいけません」

 フラッシュモブジャパンでは、ダンサー5名による結婚式のフラッシュモブ料金は20万円ほど(実施場所や演出内容により変動)。もちろん、ダンサーの数を増やしたい、自分たちだけの振り付けをしたいというリクエストに応じて金額が変わるわけだが、意外にも「強いこだわりがなければ、結婚式のフラッシュモブはもっとも費用が掛からない」と話す。

「結婚式は、ある程度フォーマットが決まっていることに加え、トレンドの曲を使用する傾向が強いため、新しい振り付けなどを考えるといったケースが少ないんですね」

 たとえば、ピコ太郎の『PPAP』、RADIO FISH(オリエンタルラジオによる音楽グループ)の『PERFECT HUMAN』、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE の『R.Y.U.S.E.I.』、 DA PUMPの『U.S.A.』などは、その時どきのトレンド曲として人気を博したそうだ。面白いことに、こうしたトレンド曲が出現すると、結婚式のフラッシュモブ需要も増加傾向になるという。

ダンサーにとっては貴重な雇用機会

 約8割が結婚式の需要――。ともすれば、コロナ禍のフラッシュモブ市場が大打撃を被ったことは想像に難しくない。その点を質すと、柴田さんはこう話す。

「延期になった結婚式がたくさんあったため、その分収益も減りました。支援金を含む補償が十分だとは思っていません。また、“余興=不要不急”のように扱われてしまった感も否めません。ただ、フラッシュモブに携わっているのは、振付師やダンサーたちです。彼ら彼女らの活躍の機会、収入の機会が減少したということは、もっと知ってほしいです」

 実は、フラッシュモブを代行する会社の中には、ダンススクールを運営、あるいはダンススクールと提携・連携しているところが多い。柴田さんも元ダンサーだった。

「僕が、この事業を始めたきっかけも、ダンサーの雇用機会を増やしたいという思いからです。体育の授業でダンスを教える機会が増えても、需要ってなかなか増えていない。ミュージシャンのPVで踊る、ライブのバックダンサーとして踊るといったことはあるけど、それ以外のニーズってあまりない。フラッシュモブというのは、ダンサーの雇用機会という視点で考えると、貴重な場なんですね」

 しかし、コロナ禍で結婚式は減少。コロナ禍によってさまざまな業界のサプライチェーンが影響を受けたが、フラッシュモブもその一つだった。

「フラッシュモブ業界が勢いがなくなったとは思っていません。ですが、このまま下火になってしまうと、ダンサーも困る。そうならないように、定番化する中で何ができるか、さまざまな可能性を探っていきたい」

 サプライズから余興へと変身したフラッシュモブ。再び我々をアッと言わせてほしい。

我妻 弘崇(あづま ひろたか)
フリーライター。1980年生まれ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターに。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

デイリー新潮編集部

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