最近、聞かない「フラッシュモブ」 ブームは下火でも、結婚式を盛り上げ、ダンサーの生活を支えていた

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 何の前触れもなく、突然、その場にいる人間や通行人がダンスなどのパフォーマンスを始め、周囲にサプライズを仕掛ける「フラッシュモブ」。2003年にアメリカで発生したものが起源と言われ、SNSの普及などにより、またたくまに世界各地に伝播。2010年代に入ると、ここ日本でも盛んに行われるようになる。ところが、ここ最近は一時期に比べると、その名を聞く機会が激減した。果たして、フラッシュモブは、いまどうなっているのか?【我妻弘崇/フリーライター】

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「売り上げのピークは、2015年、2016年でした」

 こう話すのは、10年間でフラッシュモブの実績900回以上を誇る、フラッシュモブジャパン代表の柴田康宏さん。意外に思われるかもしれないが、国内には、フラッシュモブを企画・演出する会社が数多く存在する。フラッシュモブジャパンもその一つなわけだが、ブームは過ぎ去り、「パフォーマンスとして定番化した」と教える。

「フラッシュモブが日本で取りざたされるようになったときは、まだ皆さんの中でフラッシュモブという言葉は一般化していなくて、『あの突然、踊りだすパフォーマンスって何だっけ?』といった言葉で表現されるものでした。フラッシュモブの前提は、サプライズがあるということ」(柴田さん、以下同)

 ところが、メディアで話題になることでフラッシュモブは見慣れたものへと変わっていく。企画・演出する会社も増え、フラッシュモブというワードも浸透した。こうした変化を柴田さんは、「ティラミスが定番化した状況に似ている」と話す。

 かつては、ほとんどの人が「何が始まったの!?」という印象を抱いただろうフラッシュモブ。しかし今、突如目の前で始まったとしても、「あ、フラッシュモブが始まったんだな」と戸惑わない――。そんな人も多いのではないだろうか。

約8割が結婚式の余興

 定着したことで、おのずとサプライズ感は希薄化することが予想されるが、「今も昔もフラッシュモブの売り上げの約8割は、結婚式の余興です。残りの2割は、プロポーズの場や忘年会などです」と柴田さんが話すように、実はフラッシュモブは「余興」としての人気が高いそうだ。そのため依頼者も、結婚式を挙げる25歳~35歳が多いという。

「新婦さんがあこがれるケースが多いですね。結婚式は新婦さんが主役ですから、そのキラキラ感をさらに演出したいということで、フラッシュモブのオファーをされます」

 ケースはさまざまで、新婦が新郎に内緒でフラッシュモブを仕掛け、新郎を驚かせることもあれば、その逆もある。また、依頼したのは新婦だが、その両親が支払いをするケースもあり(結果的に新婦の両親はフラッシュモブが行われることを知ることに)、新婦とその両親が新郎にフラッシュモブをプレゼントするといったこともあると話す。

 懸念されがちな、「聞いていない!」などと仕掛けられた側が怒り出すという最悪の事態についても、「親しい人しか参加しない結婚式なので、今までそういった方はいません」と語る。そして、フラッシュモブが定番化したからこそ、こんな副次的な余興も。

「依頼者の方はダンスに参加するため、事前にダンスレッスンを行います。お客様の要望によっては、その様子を撮影し、結婚式のフラッシュモブ終了後に、レッスン風景をプロジェクターで流すといったこともします」

 1粒で2度おいしい――。フラッシュモブは、変化しているというわけだ。

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