岸田総理の内閣人事を動かした2人の“大物”とは 内閣改造1週間前に会食

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「よろしく頼む」

 参院選を大勝に導いた茂木氏の続投は既定路線ではあったが、いまも参院自民党に影響力を持つ青木氏の理解が得られなくては党の不安定要因になりかねない。続いて岸田総理は、青木氏の意向をそれとなく探った。

「義理人情のない奴が、麻生(太郎・副総裁)と組んでおかしなことをしている。ほんに許せんわね」

 青木氏はいつもの出雲弁で茂木氏への批判を口にしたものの、幹事長人事には言及しなかった。岸田総理はこれを続投容認と理解した。自民党幹部が解説する。

「青木さんも人事は総理に任せるという姿勢になった。先の参院選の際、茂木さんが青木さんの長男・一彦さんの応援に入ったことも、青木さんの心境に変化をもたらしたようだ」

 それは茂木氏なりの“配慮”だった。投票日が4日後に迫った7月6日、茂木氏は小渕氏を伴って島根県を訪れていたのである。

「これからの参議院を背負って立つ、青木一彦をどうぞよろしくお願いします!」

 出雲市内の街頭で声を張り上げる幹事長。来たるべき総理・総裁の座を射止める日に備え、自身を忌み嫌う青木氏に精一杯の歩み寄りを見せた瞬間だった。

 むしろ、会合で青木氏が強調したのは小渕氏の処遇だ。青木氏は官房長官として父の小渕恵三元総理を支え、病に倒れた際には、死の淵に立ち会った。

「小渕さんが上がっていくことが最後の夢だわね。よろしく頼む」

後進の台頭を嫌う茂木氏

 岸田総理はこの言葉を重く受けとめた。一時は小渕氏を党四役の一角・選挙対策委員長へ抜擢することを検討したほどだ。が、これには後進の台頭を嫌がる茂木氏が「党四役のうち、二つのポストを茂木派が占めるのはバランスが悪い」と強く反対。結果的に見送られた。

 そこで岸田総理は小渕氏を組織運動本部長の留任に収め、一方で茂木派から加藤勝信元官房長官を3度目の厚労相へと一本釣りしてみせた。総理周辺は「茂木氏を使いつつ、小渕・加藤と競わせる狙いだ」と解説するが、茂木氏が次期総裁候補として突出することを抑える妙案ともいえる。

 時の総理が党の重鎮らに頭を下げて指示を頂くさまは、「政治は夜動く」といわれた派閥政治の復活を思わせる。徹底した守備の布陣はその賜物だが、岸田総理が「黄金の3年間」で何を成し遂げたいのかは、ますます朧(おぼろ)げになりつつある。

政治ジャーナリスト・青山和弘

週刊新潮 2022年8月25日号掲載

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