あびる優で注目される「連れ去り」は家族法制見直しでなくなるか 「共同親権導入」を訴える自民党議員に聞いた

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民間法制審も「共同親権導入」を提言

 諸外国で単独親権制度を採り入れているのは、日本、インド、トルコくらいである。山田氏は「グローバルスタンダートにならうべきだ」とも訴える。

「国際社会では、国際結婚した日本人による離婚後の子の連れ去りが起きていると、長らく日本は批判を浴びてきました。先日、凶弾に倒れた安倍晋三先生も外交に力を入れてきたからこそ、この問題に対して前向きでした。PT内でも、『慰安婦問題などと違ってこの問題だけは反論できない』という声も出ています」

 自民党PTでは、こうした議論を経て「離婚後共同親権(監護権を含む)制度を導入すべき」などの提案を柱とする5項目の提言をまとめ、6月21日に古川禎久法務大臣(当時)に申し入れを行った。

 この問題をめぐっては民間サイドでも動いている。日本テレビの人気番組「行列のできる相談所」でおなじみの北村晴男弁護士(66)が部会長を務める「民間法制審議会家族法制部会」が4月に結成され、共同親権導入を求める独自試案を5月末に高市早苗・自民党政調会長(当時)に提出した。自民党PTの提言書も民間法制審の提言も参考に取り入れた上で作成されたという。

骨抜き案

 だが、このまま「共同親権・共同監護」を盛り込んだ法案作成へと進んでいくかと思いきや、相反する動きも出ている。法制審が7月にまとめた「中間試案のたたき台」が、自民党の提言書とはまったく違う内容のものだったのだ。

 たたき台では、「乙案」として「単独親権」を残す案も記載されている。共同親権を採り入れる「甲案」においても、親権を選択制にする案などと記載。さらに、親権と監護者を切り離して、親権は双方にあれど監護者は単独とするなどの案が、α案からγ案といったかたちで盛り込まれている。実質的に単独親権制度と変わらない“骨抜き案”になっているのだ。山田氏はこう首を傾げる。

「審議会というのは、法制審に限らずいろいろな考え方の識者を集めて開かれていますのでこういう形にはなってしまったのだと思います。法制審のたたき台案のなかには、父母の離婚時に父母の協議のみで一方を子の単独親権者に認めたりすることもできてしまう案もあります。婚姻中の親権剥奪事由とは異なる事由で本人の意思に反して裁判所が親権を剥奪してしまう案もある。そうではなくて、原則原理で『共同親権・共同監護』というのが私たちの考えです」

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