「最大40兆円リスク」も! 中国・習近平が直面する重大試練「住宅ローン返済拒否」騒動の衝撃

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 中国全土で吹き荒れる「住宅ローン返済拒否」運動のうねりに収束の気配が見えない。ゼロコロナ政策で冷え込む中国経済を奈落へと突き落としかねないリスクすら孕み、共産党大会を秋に控えたいま、習近平政権にとって“最大の懸案事項”に浮上しているという。

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 発火点となったのは6月末、中国江西省の景徳鎮という地方都市で起きた前代未聞の“反乱劇”だった。景徳鎮市で建設中のマンション購入者らが「工事が再開されなければ、住宅ローンは返済しない」と開発業者などに宛てた通知書を公表。それを中国メディアが報じたことで、騒動は全土へと拡大した。

 中国メディアによると、7月下旬までに「返済拒否」に遭った物件は300を超え、全国26省(直轄市や自治区を含む)にまたがるという。

 また中国の不動産調査会社が公表した数字では「返済拒否」に遭っている物件は金額ベースで約4000億元(8兆円)にのぼり、これは中国の住宅ローン総額20兆元(400兆円)の約2%に相当。さらに“予備軍”とも目される、引き渡しが遅れている物件のローン総額は「2兆元(40兆円)」との試算値もあり、予断を許さない状況だ。

 中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏が話す。

「近年の中国の不動産(住宅)開発の主役はタワーマンションですが、そもそも人口200万人にも満たない景徳鎮市でタワマンを建設しても、高い収益性などは見込めない。つまり最初から居住目的だけでなく、いまだ衰えぬ不動産投資ブームに乗った投機目的の客も当て込んでマンション建設が行われている事情がある。今回、返済拒否という“反乱”を起こした人たちのなかにも自分が住むためでなく、投資目的で購入した人たちが少なくない数、含まれていると見られています」

工事中断が続出の背景

 日本では住宅ローンの返済は物件の引き渡し後に始まるのが一般的だが、田代氏によれば、中国の場合、物件の購入契約時からローンの支払いが始まるという。さらに返済期間も10~15年程度と日本よりも短いため、工事の進捗の遅れは無視できないのだとか。

「中国ではまだ更地の状態から物件募集が開始されることも珍しくなく、この第一次募集時に手を挙げると一番安く買える仕組み。工事が進むにつれて第2次、第3次募集も行われますが、人気は第1次募集に集中する。そのため、今回のように“ローン返済は続けているのに、肝心の建物が一向に建つ気配がない”といった現象が起きてしまう」(田代氏)

 騒動が拡大する背景にあるのが、中国の不動産市況の悪化だ。負債を抱える開発業者が急増し、資金繰りに窮した末に建設工事を中断するケースが相次いでいるという。

「引き金となったのが2021年1月、加熱する不動産バブルを警戒して、中国人民銀行が市況引き締めのために導入した総量規制でした。その煽りで同年9月、中国不動産大手『恒大集団』が経営危機に陥り、不動産市場が一気に冷え込んだ。景徳鎮のケースも恒大系列の不動産会社が販売したマンションが舞台となっています」(全国紙外信部デスク)

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