「トップガン」大ヒットの裏で歴史的な兵員不足に直面する米軍 最大の原因は“ファーストフード”か

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「トップガン マーヴェリック」の国内興行収入が大ヒットの目安とされる100億円を突破した。洋画では2019年以来3年ぶりとなる。世界各国でも大ヒットしており、興行収入は10億ドルを超えた。

 トップガンは米軍のエリートパイロット養成校を舞台とするアクション映画だ。1986年に公開された前作同様、主役はトム・クルーズが演じている。この映画は新型コロナのパンデミックの影響で公開が2年延期されたが、クルーズを始め俳優陣の迫真の演技のおかげで前作以上の大ヒットとなっている。

 前作が公開された1986年、米国では軍へ入隊を希望する若者が相次いだ。空軍を始め軍全体の採用活動は好調だったが、今年は異なる現実に直面しているという。

 米空軍は今年度の募集締め切りの9月30日を前に、映画の大ヒットとは対照的に新兵の採用に苦労している。カーレース会場などで入隊募集用の仮設テントを設けて懸命の求人活動を続けているが、新型コロナの影響や雇用市場の逼迫などのあおりを受けて、今年の採用予定数は例年のレベルに遠く及ばない。

 海軍や海兵隊でも志願者が減っているが、最も深刻な状況にあるのは陸軍だ。

 現在の兵員数は46万6400人で前年よりも9600人減っている。今年度の採用予定数は募集目標(6万人)の半分程度にとどまっており、来年の兵員数は44万5000人にまで減少する可能性があると見込まれている。

 米国はベトナム戦争から撤退した1973年に兵員の確保を徴兵制から志願制に移行した。その後半世紀にわたり、米軍はこのシステムの下で必要な兵員をなんとか確保してきたが、必要な数の若者を集めることができなくなっているのだ。「米軍は徴兵制度廃止以来、最大の兵員不足に直面している」と危惧する声が出ている。

 深刻な事態を目の当たりにしたオースチン米国防長官は「米軍の戦闘能力が直接脅かされる恐れがある」と警告を発しているが、米軍はなぜ未曾有の兵員不足に陥りつつあるのだろうか。

 米国では現在、軍隊に入隊を希望する若者の割合が低下している。米国防総省によれば、入隊の意思を持つ若者は、入隊可能な若者のわずか9%に過ぎない。この数値は2007年以降で最も低くなっているが、若者の軍隊に対するイメージが悪化していることが大きく影響している。

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