日銀の審議委員の交代で方針転換か 金融緩和に慎重な人物が就任

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 わが国の金融・通貨政策の最高意思決定機関である日本銀行の政策委員会は、総裁と、2人の副総裁、そして6人の審議委員の計9人からなる。審議委員は民間から選ばれるが、相当に窮屈なポジションだ。

 日銀クラブの記者が言う。

「審議委員になると、兼業が禁じられます。これが徹底していまして、町内会の役員であっても辞めなくてはいけない。株取引の凍結は言うまでもなく住宅ローンもダメ。審議委員の発言は長期金利に影響をもたらすので、疑惑を持たれないようにするためです」

 その日銀で2人の審議委員が就任したのは7月24日のこと。5年の任期を終えた鈴木人司氏と片岡剛士氏に代わって、新しく三井住友銀行上席顧問の田村直樹氏と、岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏が就いたのである。

「注目すべきは金融緩和に積極的なリフレ派の片岡氏の後任に、慎重派の高田氏が入ったことです」(同)

 高田氏は東大経済学部から日本興業銀行、みずほ証券、みずほ総合研究所という経歴を持つ。父親はフランス文学者の高田勇だ。大学時代は著名な経済学者・小宮隆太郎教授のゼミ生だった。

リフレ派と慎重派が逆転

 シグマ・キャピタル代表取締役の田代秀敏氏が言う。

「高田さんの師匠の小宮教授はマルクス経済学が優勢だった東大に米国から最新の近代経済学を持ち込み、主流とした立役者です。1974年の狂乱物価の原因は石油危機ではなく日銀の金融政策の失敗であると主張し、日銀と正面から大論争しました。そのお弟子さんですから、リフレ政策を取り続ける黒田総裁に異を唱えると見られています」

 高田氏が審議委員になったことで5対4とリフレ派が過半を占めていた政策委員会も逆転することになる。

「無制限に国債を買い続けるという手法で金をばらまき続けた結果、日銀の国債保有残高は517兆円にのぼる。いくらでもお金を刷れる日銀だからできる荒業ですが、政府の借用書を日銀が買い続けているのと同じ。結果、円安が急進行しており、これ以上は危険です。危機感を抱く財務省が高田さんを押し込んだと見られています」(前出の記者)

「人事はメッセージ」とも言う。長らく続いた金融緩和策が終わりを迎えようとしている。

週刊新潮 2022年8月4日号掲載