側近2人を解任したゼレンスキー大統領 ロシアの魔の手が忍び寄る!

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、解任されたゼレンスキー大統領の2人の側近について聞いた。

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 ウクライナのゼレンスキー大統領は7月17日、情報機関である保安局(SBU)のバカノフ長官とベネディクトワ検事総長の解任を発表した。60人以上のSBUと検察の職員がロシアに協力していたことが分かり、その責任を取らせたという。

「ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク州や南部のヘルソン州など、ロシアの支配下にある地域にいるSBUや検察の職員が、ロシアに情報を漏らしているのです」

 と解説するのは、勝丸氏。かつて公安部外事警察に所属していた同氏は、ロシアを担当していた。

「SBUや検察の職員は、現在ロシア軍の戦争犯罪を調査しています。ところが、多くの職員が、ロシア側の依頼で戦争犯罪の証拠を破棄したり焼却したりしていたのです」

60人以上が寝返った

 ロシアに対して、ウクライナ人は一致団結して戦っているのではなかったのか。

「日本の報道だけではピンと来ないかもしれませんが、現在ウクライナ南部や東部は、かなり深刻な状況に追い込まれています。ロシアの占領下にある南部のヘルソンとメリトポリでは、地元住民へのロシアのパスポートの配布が始まっています。東部のドネツク州やルガンスク州もロシア銀行の支店が置かれ、ロシア通貨ルーブルが流通しています」

 着々と“ロシア化”が進んでいるのだ。

「東部や南部に住むウクライナ人は、将来に不安を抱いている者が少なくない。そこでロシアの諜報機関であるGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)やSVR(ロシア対外情報庁)の諜報員はSBUや検察の職員と接触、ロシアに協力してくれたら、将来の仕事や年金、住居などを保障すると持ちかけています。それで寝返った職員が60人以上も出てしまったというのです」

 ロシアは、人の弱みに付け込んだとも言える。

「それに元々、ロシアとウクライナは親戚国家ですからね。ウクライナ人の親戚がロシアにいるのは珍しいことではありません。SBUや検察の職員に、『協力してくれないなら、ロシアにいる両親が不利な目に遭うぞ』と脅かされたら、ひとたまりもないでしょう」

 寝返ったSBUや検察の職員は、戦争犯罪の証拠を隠滅しているだけではないという。

「中には、職員名簿をロシアへ提供し、協力してくれそうな人物を教えているのです。ロシアの諜報員は、その名簿をもとに、次々と職員を協力者にしているそうです」

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