東電訴訟で13兆円の賠償判決 裁判長は「最高裁判事への道を突っ走る超エリート」

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「7カ月かけて書いた判決です。最後までしっかり聞いてください」

 朝倉佳秀裁判長は、そう前置きしてから主文を読み上げた。東電の株主が旧経営陣5人を訴えていた株主代表訴訟の判決が出たのは今月13日。東京地裁は4人に対し13兆3210億円の支払いを命じた。実に巨額の賠償額だった。

 目下、福島第一原発事故の損害賠償を求める訴訟は全国で起こされているが、いずれも焦点は津波の「予見可能性」と、事故を防ぐための「結果回避」ができたか、の二つである。

「2002年、政府の地震調査研究推進本部(推本)はマグニチュード8級の津波地震が日本海溝沿いなら、どこでも起こりうるという長期予測を出しました。一方で土木学会津波評価部会は、波源(津波を起こす領域)が福島県沖では見つからなかったとしていました。それでも原発の沖で地震が起きたらどうなるのか東電がシミュレーションしたところ最大波高15.7メートルという可能性が浮上した。それが現実となってしまったのですが、当時としてはあくまで仮定の話でした」(司法担当記者)

「イデオロギー色の強い判決」の声も

 ところが、朝倉裁判長は自ら福島原発を視察するなど、最初から“前のめり”で、「推本」の長期予測などから予見可能と断定。建屋などの防水対策を取らなかったとして今般、アッと驚く賠償額を命じたのである。

 この判決に対して作家・ジャーナリストの門田隆将氏が言うのだ。

「もし、推本の長期予測によって原発を襲った津波を予見できたというのなら、当時の首相にも賠償責任があるはずです。震災で2万人近い犠牲者を出したのに行政は事前の対策を取らなかったのですから。しかし実際のところ、あの大津波を誰が予想できたというのでしょうか。津波のシミュレーションも吉田昌郎氏(福島第一原発の元所長)が、あくまで念のために行ったもの。それなのに、今頃になって“予見できた”という根拠にされてしまう。賠償額もさることながら、最初から答えありきのイデオロギー色の強い判決だと思います」

 朝倉裁判長は早稲田大学出身で司法研修所教官や最高裁の民事局課長、東京高裁判事を経て、現在、民事8部の総括判事を務めている。一言でいえば、「最高裁判事への道を突っ走る超エリート」(前出の司法記者)。だが、待ち構える上級審も同じ考えとは限らない。

 すでに最高裁は「原発事故は不可避だった」という判断を示しており、東電旧経営陣が被告となった刑事裁判でも一審で「予見可能性」が否定されているからだ。

週刊新潮 2022年7月28日号掲載