イチローもフレッシュオールスターでブレイク  今年注目の“ルーキー7選手”

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高校通算70本塁打のスラッガー

 一方の野手では、日本ハムのドラフト2位、有薗直輝が面白い存在だ。千葉の新興勢力である千葉学芸で1年夏から4番を打ち、コロナ禍で多く練習試合ができない中でも高校通算70本塁打を放った右のスラッガーである。

 一軍では6月21日の楽天戦では3三振を喫するなど、“プロの壁”を痛感する結果に終わっているが、二軍ではまずまずの成績を残している。たくましい体格を生かしたフルスイングは、とても高卒1年目とは思えない迫力がある。

 さらに、打撃以上に凄みがあるのが、サードからのスローイング。高校時代に投手として140キロ台中盤のスピードをマークする強肩で、まさに“矢のような”と形容したくなるボールを投げる。打撃だけでなく、守備面でもぜひ注目してもらいたい。

 ここまでは高卒ルーキーを取り上げたが、大学から入団した選手で忘れてはならないのが、中日・ブライト健太とソフトバンク・正木智也だ。

 ともに右の強打者タイプで、将来の中軸候補としてドラフト1位で入団。揃って怪我で出遅れたものの、二軍では徐々にその実力を発揮しつつある。ブライトは、豪快なスイング、正木は軽く振っているようでも高々と飛ばすことができ、芯でとらえた時の長打力は目を見張るものがある。プロで初となる大舞台でも大爆発に期待したい。

かつてはイチローがMVPに

 ルーキー以外で紹介したいのが、育成選手ながら選出された2年目の中日・松木平優太。高校野球では全く無名の精華高校出身で、大きな試合での実績はないが、履正社との練習試合で好投したことから評判となった右腕だ。2020年夏に行われた「プロ志望高校生合同練習会」に参加し、打者5人から3三振を奪う好投を見せた。この合同練習会で名前を知られることになったが、プロのスカウトの間でも密かに注目されていた選手だという。

「これまでプロに行くような選手が出てくる学校ではなく、コロナもあって試合が少なかったので、本当に“隠れていた素材”という感じの選手でした。とにかく体が細かったですけど、フォームに悪いところがない。体ができてくれば、球速も上がりそうな雰囲気は凄くありましたね。公式戦が例年のように行われていれば、もっと騒がれていたと思います。そういう意味では、練習会があって良かったですよね。プロでも順調に成長しており、来年あたりに支配下登録も狙えるんじゃないですかね」(前出の関西地区担当スカウト)

 このほかの注目選手では、7月20日の日本ハム戦で、9回二死までノーヒットに抑え、あと一人で惜しくも大記録を逃したオリックスのドラフト1位、椋木蓮もメンバーに選出されている。

 かつてはイチロー(オリックス・1992年・当時はジュニアオールスター)、近年では岡本和真(巨人・2016年)がMVPに輝き、その後スターへの階段を駆け上がっている。今年の出場選手から、球界のスターとなる選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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