伊藤詩織さんが会見で、「安倍元首相」銃撃の責任を問われる「中村警察庁長官」について語ったこと

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もし辞められるのであれば

 逮捕状の取り消しと安倍元首相の警備に問題があったか否かは直接関係のないことだが、伊藤さんは大要こんな風に答えている。

「中村格氏に対しては、これまでの様々な決断について、いろいろな質問が投げかけられています。それらに答えを出さないということは私の中でも気持ち悪いものがあります。もし辞められるのであれば、辞める前に、投げかけられた疑問についてお話をしてほしいなと思っています」

 会見に同席した西廣洋子弁護士からは、ここまでの流れと最高裁の決定などについて以下の説明があった。

「詩織さんが山口氏に対して損害賠償請求をした本訴については一審、二審で勝訴して、最高裁でもその判決は維持され、山口氏による(伊藤詩織さんへの)性的暴行があったと認められ、詩織さんへの330万円の損害賠償請求が認容されるという判決になりました。一方、山口氏から詩織さんに対して名誉棄損に基づく損害賠償請求が反訴されておりましたが、これについては、一部認容されています。デートレイプドラッグのくだりについて山口氏の名誉を棄損したということで55万円の慰謝料が認容されています」

 デートレイプドラッグ云々というのは、山口氏がそういう薬物を用いた可能性があると伊藤さんは自身の経験を下に語っていたが、それが認められず、その部分に関しては山口氏への名誉棄損を裁判所が認定したことを指している。もっとも、本筋の性的暴行に関しては一審以降一貫して裁判所は「あった」と認めてきたというわけだ。もう少し西廣弁護士の話をご紹介しよう。

嫌疑不十分の意味

「本訴については刑事事件については嫌疑不十分ということで不起訴処分になりました。起訴猶予という形です。しかし、民事事件では性的暴行があったということが認められています。刑事事件でも無罪とされたわけではなく、嫌疑不十分、疑いは残るけども証拠が不十分であるので起訴しないと、検事が決断したということになります。一方で、民事裁判では性的暴行があったという風に裁判所の方で認定されています。これは結局、なかったことにはしなかった、ということで、詩織さんご本人にとっても、性被害の事件にとっても、大きな意義があったなという風に感じています」

 先の中村長官の「指揮として当然」発言の後には、「その後の経緯を確認してもらえば」という言葉もあった。検察が起訴していないのだから逮捕中止の判断は正しいという主張のようなのだが、民事での裁判所の判断が確定した今、どのように当時のことを捉えているのだろうか。現在の気持ちや考えを語ってほしいと感じているのは伊藤さんだけではないかもしれない。

 いずれにせよ、被害から7年、裁判から5年を経て、いったんの「区切り」がついたことになる。

デイリー新潮編集部

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