【基礎から分かる】統一教会はどのように生まれ、何を教えているのか 安倍元総理暗殺事件で注目

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誘われたという人がいるかも? 「原理」の勧誘

 日本では1964年に久保木修己を初代会長にして宗教法人の認可を得る。同年、全国大学連合原理研究会が創立され、大学生・青年への伝道が活発化する。この団体は40年以上も日本の主要大学で活動を継続しているので、読者の中に私も誘われたという人がいるかもしれない。「原理の勧誘に気を付けろ」と大学の新聞会や寮の先輩から新入生へアドバイスがあったと思う。

 統一教会は、伝道のみならず、政治活動にも積極的に関わるようになる。1968年に国際勝共連合を設立し、反共政治活動を始める。これによって保守派の自民党大物政治家とも友好関係を築いた。

 1974年には世界平和教授アカデミーを設立し、言論界に共鳴者を求める。大学人の中には統一教会の経費で国際会議等に出席した者も少なくなかった。こうした政治的対外活動には多額の経費がかかったし、韓国、アメリカでの宣教活動にも莫大な資金を必要とした。文鮮明の指示の下、日本の統一教会は資金調達を一手に引き受け、「資金作りをミッションとする信徒」を養成する教会となったのである。筆者としても日本の信徒が流した汗と涙に敬意を表し、この点を詳しく説明したい。

 創設期の信徒たちは廃品回収や花売りを細々とやっていたが、世界宣教の経済基盤を築くという目的で会社組織を作り、物販で財源の確保を目指すようになる。なかにはペンタブレット等のIT製品製造で成功したワコムのような企業も現れた。ただし同社は、その後社長が統一教会系グループと縁を切り、本業に専心している。事業が軌道に乗った例外的事例である。

霊感商法の誕生

 ビジネスの最終判断を文鮮明にあおぐ神頼みの商売には厳しいものがあった。そこで、むしろ宗教活動そのものを経済活動に転換できないかと知恵を絞って考案されたのが、姓名判断や家系図鑑定と絡めた商品の販売である。先祖の因縁や霊障を取り除く、あるいは開運のためといって、1980年代に韓国から朝鮮人参茶、高麗大理石壺等を輸入して販売した。このやり方が霊感商法として80年代後半から社会問題となった。

 1987年に全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成され、これまで商品の返還交渉や損害賠償請求の提訴が行われてきた。同会の調査によれば、全国の消費者センターや弁護士会に寄せられた2007年までの累積被害総額は1024億4720万425円に達するという。このような宣教資金調達のやり方とそれに付随して広まった悪評により、統一教会は宣教方法すら変えざるを得なくなった。統一教会=霊感商法というイメージから、名前をそのまま出すと一般市民は警戒して話を聞いてくれなくなったのである。そのため、とりあえず、正体を隠して市民に近づき、印鑑や壺の販売方法で培った手相・姓名判断、家系図鑑定を入り口にして信者を勧誘する独特な布教方法を採用するに至った。

 (略)

統一教会の教え

 統一教会の教義は教典「原理講論」に加えて、教祖がこれまでの説教で語った膨大な「御言葉」、及び聖書の参照から構成される。創造原理、堕落論、復帰原理が柱となる。

 創造原理では宇宙の根本原理、神の創造目的が説かれ、堕落論では不幸の原因である原罪の真相が解き明かされる。創世記において、エバが善悪を知る木の実を蛇にそそのかされて食べ、その実をアダムにも食べさせると目が開き、二人は裸であることに気付いた。神は、取って食べるなという神の戒めを破ったので二人を楽園から追放したという、あの箇所である。文鮮明は、蛇とは後にサタンとなる堕天使にして元天使長のルシファー(統一教会ではルーシェルという)であり、人類始祖のエバがそそのかされて食べた禁断の果実とは、ルシファーとの禁断の愛であったと断じる。神様はアダムが一人でいては寂しかろうと、アダムのあばら骨からエバを作ってくれたのであるから、エバはアダムの伴侶である。しかるに、エバはルシファーと不倫をおかし、次いでアダムとも慌てて性関係を持つなど堕落した。そして、サタンからエバ、エバからアダム、人類の始祖から子孫たる全人類に神に背いた悪の血統が相続された。人間が罪を犯すのはサタンの血をひく末裔(まつえい)のゆえとされる。

 もちろん、このような堕落の真相やそれが原罪だといった説明は、聖書に全く書かれていない。

 では、何を根拠として? 実は文鮮明がイエスや神から直接聞き及んだ話だという。そう言われてしまうとわれわれとしても、ひとまずなるほどと聞いておくしかないではないか。

 神は人間を神の側に取り戻す計画を考えられたそうだ。救世主の派遣である。統一教会によれば、イエスは人間の娘を娶(めと)って善なる子孫を残す予定であったが、人間の不信により十字架で殺害された。そこで神は計画を変更せざるを得ず、イエスを天にあげられ、イエスの復活を信じるものたちに霊的救済のみを約束されたのだとする。しかし、神は人類の肉体も含めた完全な救済(復帰の摂理)をお考えになり、人類に再臨主を遣わした。その再臨主こそ何を隠そう、私であるというのが文鮮明の言である。これまた本人がそう言い、霊界も証すところだということなので了承しよう。しかし、彼の母がマリアのように彼を処女懐胎(無原罪の宿り)したという話はない。(略)

合同結婚式

 普通に人間として生まれた再臨主は、私たちをどのようにして救済してくれるのだろうか。いますこし、筆者の説明にお付き合い願いたい。

 ここで登場するのが有名な「合同結婚式」である。「祝福」とも呼ばれ、文鮮明が統一教会員同士をその場で指名して、あるいは写真を見てマッチングする。信徒はどんな相手であっても再臨主が選んでくれた最高の伴侶として結婚する。このような家庭から「無原罪の子」が生まれるとされる。文鮮明夫妻を真の親とする信者の家庭によって神の王国は建設され、地上天国が実現されるというのである。

 教団の公式発表では、1960年から今まで37回にわたり国際合同結婚式が挙行され、祝福にあずかったカップルは30億組を優に超えるとされる。誤植ではない。1998年6月13日、アメリカのマディソンスクエア・ガーデンで3億6千万組第1次世界祝福式が行われ、翌1997年2月7日、ソウルの蚕室オリンピック・メインスタジアムにおいて3億6千万組国際合同祝福式があった。なお、生きている人だけではなく、既に霊界に住んでいる人たちも先祖解怨という統一教会の儀式を通して救われ、祝福を受けているものもいるとのことだ。統一教会は、Blessingと書かれたコーヒー・フレッシュ状の入れ物に入った赤い液体を多くの人に配っており、もらっただけでも祝福にあずかったことになるという。このようにして何億組という数合わせをしているのだが、筆者もその液体を持っているので数えられた可能性がある。

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 事件の容疑者によれば、母親が多額の献金をしたことによって、家庭は崩壊したという。上に書かれている1024億円あまりの「被害額」の一部ということになるのだろうか。

『霊と金―スピリチュアル・ビジネスの構造―』より一部抜粋、再構成。

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