元信者が「統一教会」から19億円を取り戻すまで 先祖代々の土地を売り“献金”

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判決回避の和解

 田中さんはマスコミ報道で統一教会に不信感を抱くようになったが、脱会に踏み切れない。そればかりか勤め先を辞め、教会が運営する化粧品販売に乗り出したのである。

「幹部からの要請で、北関東の一地区にある教会の化粧品販売事業を、田中さんの会社に譲り渡す約束だったのです。しかし、別の幹部によって反故にされたうえ、教会の事業を分割するようなことは、教義に反するサタンの行為と非難されました」(統一教会ウオッチャー)

 後日、田中さんは幹部から教義のためには違法行為も許されるという講釈を受けた。

さすがの田中さんも脱会を決意。4年前、19億円の支払いを求めて、東京地裁に提訴したのである。

「先祖の因縁を説いて不安を煽り、献金を強要するのは社会的相当性を逸脱しているというのが原告の主張です。統一教会としては個々の信者の責任で行なったというが、マニュアル通り幹部からの指揮命令を受けている。組織的勧誘は明らかですよ」(同)

 原告被告ともに譲らなかったが、突如、統一教会の幹部が個人で田中さんに19億円を支払うことで合意。60回の分割払いで、担保として教会の不動産を差し出す。

 統一教会では、

「原告から和解の強い申し入れがあり、応じました」(入江正和広報部長)

と説明するが、原告代理人の山口広弁護士は、

「霊感商法の被害は今も全国で続いています。和解とはいえ、献金したうちの19億円を取り戻し、実質的に勝訴。非常に大きな意味を持ちます」

 さる司法記者の話。

「この訴訟は集中証人尋問を直前に控え、年明けには判決の予定でした。近年は地裁や高裁で、霊感商法は違法との判決が下され、最高裁も下級審判決にお墨付きを与えています。急遽、統一教会が和解に応じたのは、判決回避のためとしか思えませんね」

とりあえず田中さんはホッとしているそうだ。

デイリー新潮編集部

週刊新潮 2002年10月31日号掲載

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