安倍外交の真価 日本はアメリカの「代理戦争」戦略に巻き込まれるな

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台湾有事の際も「代理戦争」

 米国は中国にもロシアと同様の対応に出ている節がある。

 米国政府は近年、台湾に対して史上最大規模の武器売却を実施し、軍事顧問団を派遣して台湾軍を訓練している。米軍艦艇による台湾海峡の航行なども日常化させている。

 中国軍も台湾海峡周辺で軍事演習を活発化させており、事態はエスカレートするばかりだが、深刻な分裂が進む米国で対中強硬路線は超党派で一致できる数少ないテーマだ。米国政府が中国への挑発を止めることはないだろう。

 バイデン政権はウクライナに米軍を投入しない代わりに強力な武器支援を行っている。いわゆる「代理戦争」というやり方でロシア軍と対峙しているが、台湾有事の際も「代理戦争」になる可能性が高い。だが、その遂行が危ぶまれる事態となっている。

 ウクライナに未曾有の規模で武器供与を行っている米国で深刻な武器不足が生じているからだ。武器の生産能力には限りがあり、在庫補充には数年を要するという。

 香港紙「アジア・タイムズ」は6月26日「中国が台湾に武力侵攻しても、米国は多くの武器をウクライナに供与してしまったために、台湾への武器支援を行うことはできないだろう」と報じている。

 米国の「代理戦争」戦略の失敗のせいで多くのウクライナ人が犠牲となっていることは否定できない事実だ。米国の挑発が台湾有事を招き、これに有効に対処できなければ、「アジアは次のウクライナ」になってしまうことは火を見るより明らかだ。

 国難に直面している今こそ、日本は真の国益を追求しなければならない。対話重視に徹した安倍外交の真価をもう一度見つめ直すべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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