生稲晃子候補を支持するのは“ちょろい中高年男性”?「投票する意味がわからない」と騒がれても余裕のわけは

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「相棒」で、岸部一徳さん演じる官房長が残した「神輿(みこし)は軽い方がいい、行先を決めるのは担ぎ手だから」という意味のセリフ。参院選のアイドル議員擁立を思わせる言葉である。特に、NHKの候補者アンケートで「改憲」について以外はほとんど無回答と提出した生稲晃子候補はわかりやすい。元おニャン子としての知名度は抜群でも、政治に対する確たる意思や知識はない。軽くて見栄えのする神輿そのものではないだろうか。

 ツイッターでは「#生稲晃子に投票する意味がわからない」がトレンド入り。騒ぎを受けて本人は「事務局スタッフとの情報共有が取れていなかった」と動画つきで陳謝した。きちんと回答していたのに、無回答になったのは事務局のミスとのことだ。ただ放送時は憲法改正に関する質問には答えており、苦しい言い訳を重ねたという見方は強い。また「自分らしく生きられる国へ」と動画で語りかけながらも、同性婚には反対という回答も物議を醸した。神輿ならぬ発言の軽さを、ますます印象付けてしまったようだ。

 とはいえ、騒ぎになったといっても大した問題ではない。神輿の担ぎ手たちはそう考えていることだろう。生稲氏についてツイートしている層は主に40代、男女比でいえば男性が8割近い。彼女のファン層と重ならないとはいえないが、中心層としてはもう少し上の50~60代男性ではないか。投票率が高い年齢層と重なる。事実、彼女は当選確実だと報じるメディアは多い。

 令和1年の参議院選挙での年代別投票率を見ると、60代が最多で63.58%、次いで50代の55.43%、40代が45.99%と続く。30代と20代は30%台と、もはや60代と倍の開きがある。ツイッターで若い層がいくら騒いだところで、高齢者層はトレンドのハッシュタグなど知りもしない。ならば投票には大きく影響しない、と生稲陣営が考えても不思議ではない。

 街頭では今井絵理子参議院議員とともに声を張り上げ、ピンク色の服装でアイドル色を崩さない生稲候補。今井議員といえば初当選時、地元・沖縄の在日米軍基地問題について「これからきちんと向き合っていきたい」と明るく言って池上彰氏を唖然とさせたクチである。どんなに未熟でも愛嬌で押し切れるのが選挙。そういう勝ち筋を作ってしまった人間とタッグを組むということは、生稲陣営の戦略も推して知るべしである。

生稲氏の「一人で泣いた」「最後は倒れてもいい」発言も……アイドル議員の必須条件は「悲劇のヒロイン力」

 といっても、明るくかわいいだけでは意味がない。なぜか擁立される議員には、苦労話が求められる。順風満帆の人生ばかり語っても、かつての人気に甘えたタレント候補と反感を買うからだろう。実際に今井議員は障害のある息子さんを持つシングルマザーとしての顔を、生稲氏は乳がんの経験を前面に出している。闘病経験という点では三原じゅん子議員もそうだ。党は違うが元モーニング娘。の市井紗耶香さんは、4人の子育て経験の大変さをきっかけに立候補。なお今年は公認を受けながらも、今度は子育てを理由に出馬を辞退した。

 苦労人というイメージを強めるかのように、生稲氏はやたらと「一人で泣いた」「最後は倒れてもいい」「若い子に無視されて」など同情を誘うような発言も多い。理で押すよりは情に訴える方が得意なのだろうし、それもまた政治家に必要な能力のひとつではある。

 今井氏の「一線は越えていない」といった珍妙な回答もそうだが、悲劇のヒロイン力というのも擁立されるアイドル議員には共通している。運命や世間にそっぽを向かれても、耐えて頑張る私が好き、そんな私を見て、という姿勢である。

 健気に奮闘する女性というイメージづくりは、有権者にも有効なようだ。生稲氏は立候補にあたり、おニャン子メンバーから「あなたはいろいろな経験があるから大丈夫」と言われたと明かしている。人生経験と政治家としての能力はまた別だが、苦労が多い人ほど優しく器が大きいと思われがちである。また松葉づえ姿の今井議員も好評だったという。関係者いわく、党支持層の中高年男性を中心に「ケガしているのに頑張っていると応援する人が増えた」とのこと。ちょろいもんである。

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