中国が日本の周辺海域で資源調査 専門家の間で語られる“不都合な真実”とは

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メタンハイドレードでも…

 石垣島沖に存在するとされるメタンハイドレードについても「不都合な真実」がある。

 メタンハイドレードは天然ガスの主成分であるメタンガスが水分子と結びついてできた氷状の物質だ。メタンハイドレードは日本の周辺海域に大量に存在していることから、資源の乏しい日本にとって「夢のエネルギー」と言われることが多い。日本では世界に先駆け2013年から試掘が始まっているが、実用化の目途は全く立っていない。

 現在、世界で海底深くの油・ガス田の商業開発が進んでいるが、その採掘が可能になっている理由は原油や天然ガスが自噴することにある。液体である原油や気体である天然ガスであれば、井戸を掘るだけで油・ガス田内の圧力の力で地上まで吹き上がってくる。追加のエネルギー投入がいらないから採算が合うのだ。

 だが固体であるメタンハイドレードはそういうわけにはいかない。自噴しないメタンハイドレードを海底深くから運搬するためには大量のエネルギーが必要となる。「メタンハイドレードから得られるエネルギーよりも採取するために投入されるエネルギーの方が多い」と指摘する辛口の専門家もいるほどだ。

 レアメタルでも同様の問題が生じる。メタンハイドレードに比べ採取できる量は少ないだろうが、運搬などに要するコストを加味すれば、陸上で採取できるレアメタルよりもはるかに割高になる可能性が高い。

 このことからわかるのは、日本の周辺海域の資源はほとんど価値がないということだ。
 国境管理の問題は厳正に対処すべきだが、中国が触手を伸ばしたからといって、日本が必要性に乏しい資源調査を直ちに行う必要はないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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