新助っ人「ウォーカー」絶好調の陰で、生え抜き外野手が活躍できない問題

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松原は昨季、育成出身で初の規定打席クリア

 近年、巨人が獲得した助っ人外国人の外野手は、好不調の波が激しく成績を残せなかったり、新型コロナ禍の事情もあり途中退団したりと、期待に応える活躍をみせていない。こうした中で、推定年俸が3400万円という「お買い得」だったウォーカーの大活躍は、首脳陣やファンにとって喜ばしい限りだろう。

 一方で、ウォーカーの活躍で出場機会を失い、今季は低迷しているのが育成出身の松原聖弥(27)だ。2016年の育成ドラフト5位で入団後、左右に打ち分ける粘り強い打撃に加え、50メートル5秒8の俊足、強肩を持ち味に二軍などで経験を積み、2020年7月に一軍初昇格。攻守走三拍子そろった実力を存分に発揮し、昨季はチームでは育成出身初の規定打席をクリアし、打率.274、12本塁打、37打点、15盗塁と好成績を残した。守備範囲の広さも魅力で、外野フェンス際の難しいボールを幾度となく捕球するなど、チームのピンチを救ったファインプレーは少なくない。

 原辰徳監督(63)には「天才的に野球をやる方」とうならせるなど、高い野球センスをみせる松原は今季、いぶし銀の活躍で巨人一筋の人気選手だった亀井コーチから背番号9を引き継いだ。推定年俸は4000万円にはねあがるなど、さらなる飛躍が期待されていた。

 だが、開幕してみれば、ウォーカーの台頭で出場機会に恵まれず、調子は上がらないまま37試合に出場して打率は137と低迷。 6月9日には出場選手登録を抹消され、現在は二軍で調整に励んでいる。昨季、久々にブレイクした生え抜きの外野手だっただけに、今季の松原の不調には、多くのファンが肩を落としていることだろう。

過去20年、生え抜き外野レギュラーは松井、高橋、長野のみ

 巨人の外野は、これまで主に助っ人外国人や他球団からの移籍組がレギュラーを務め、今も中心はセンターを守る19年に広島から移籍してきた丸佳浩選手(33)だ。チーム生え抜きでレギュラーとして活躍し、看板選手にまで育ったのは、過去20年では、亀井コーチのほかには松井秀喜(48)、高橋由伸(47)、長野久義(37)くらいしかいない。守備の連携が内野ほど求められない外野は、新加入選手が活躍しやすいポジションなので、外国人らがレギュラーなのは珍しくないが、ここまで生え抜き外野手が育たないチームは他にない。

 昨季、巨人一筋17年間の現役生活に終止符を打った亀井コーチ。皮肉にも、守備面の徹底指導にあたる「愛弟子」ウォーカーの活躍が、背番号9の後継者であるもう一人の「愛弟子」松原の活躍の場を奪っているという側面もあり、心境は複雑だろう。ただ、「亀井コーチは、09年に25本塁打を打った翌年、打率1割台で苦しんだ経験をしている。松原の気持ちも分かるだけに、何とか這い上がってきてほしいと、特別な思いで復活を待っている」(スポーツ紙記者)という。

 現在、巨人の内野守備は、一塁・増田陸(22)、二塁・吉川尚輝(27)、遊撃・坂本勇人(33)、三塁・岡本和真(26)と、生え抜き選手がレギュラーを占める。外野にも一人ぐらい、そろそろ生え抜きでレギュラーを奪取する選手が出てきてもいいのではないか。それが松原になるのか別の選手になるのか。巨人の生え抜き外野手の奮起が、新たなスター選手を誕生させるかもしれない。

デイリー新潮編集部

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