4万人デモ、スタグフレーションの恐怖 ジョンソン英首相はウクライナ問題でいつまで主戦派を貫けるか

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経済を犠牲にしてまで「主戦派」を貫けるのか

 ジョンソン首相は17日、ウクライナの首都キーウを訪問した。4月上旬に続き2回目だ。ゼレンスキー大統領との会談で「120日ごとにウクライナ兵を最大1万人訓練する」ことを伝えたとされている。英国は2014年のロシアのクリミア併合以降、米国とともにウクライナ兵の訓練に取り組んできており、今回も英国陸軍が新たに供与する武器の使用に必要な訓練をウクライナ国外で行うとされている。

 だが、ロシアのウクライナ侵攻に伴うインフレの高進で、西側諸国の市民の不満は政権与党に向かっており、徐々に和平派の勢いが増しつつある。

 これに対してジョンソン首相は18日「インフレなどでウクライナでの紛争に対する疲労感が高まるリスクがある」と国際社会に警告を発したが、軍事支援を続けることで紛争が長期化すれば、英国を始め世界のインフレは悪化するばかりだ。英国は経済を犠牲にしてまで「正義派」に固執するのは愚策だと言わざるを得ないだろう。

 ジョンソン首相は「就任以来3年間、常に場当たり的な政策対応に終始してきた」と揶揄されている(6月8日付ロイター)。国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開催国だったにもかかわらず、5月に入ると英国政府はエネルギー価格を抑制するため、温暖化防止よりもエネルギー安全保障に軸足を移しつつある。

 最悪期に突入しつつある英国経済を救うためには、ジョンソン首相はウクライナ問題でも和平派に転ずるという「離れ業」を演じる必要があるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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