既視感はあるが観やすい「インビジブル」 とにかく愚鈍に描かれる警察組織

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 犯罪者が逮捕されずにのうのうと生きているだけでなく、息を吐くようにうそをついて、金と権力を握っている国。そんな日本でフリーランスの手練れな犯罪者が暗躍しているお話、それが「インビジブル」である。

 犯罪コーディネーターって何なのさ、と思って観ていたが、下請け業者のフリーランス(クリミナルズ)が冷酷かつそれなりに優秀でね。しかも、犯罪の種類によって専門特化されている。

 爆弾が得意な花火師とか、少年に暗殺術を教え込む調教師とか、遺体を美しく飾る演出家とか、殺しをエンタメに仕立てる興行師とか。苦痛だけ与えて殺すドクターってのもいた。フリーランスをいじめぬくインボイス制度が頭をよぎっちゃって、クリミナルズの皆さんはどうするのかしら、犯罪者だから納税なんかしないか、なんてことを思いつつ。

 犯罪コーディネーター・インビジブルと名乗るのはキリコ。演じるのは金髪の柴咲コウ。いろいろと匂わせながらも最終的には悪者じゃないんだろうなとわかっちゃいたし、前半の印象はおしゃクソセレブで高飛車な犯罪者。麗しい下僕(板垣李光人)や姦(かしま)しいハッカー(棒読みのIKKO風なDAIGO)を従えてるし。

 警察もなぜかVIP待遇で、特別施設の通称「民宿」で保護。高級な調度品がそろい、冷蔵庫とケトルが妙に可愛くて目についた(ドルガバですってよ)。こうなると♪ルールル、ルルル、ルールルと徹子ならぬキリコの部屋状態。扱いに困る警視庁捜査1課。1課があまりにぼんくらで、内藤剛志を思わず探してしまう。

 キリコと凶悪犯罪の捜査にあたるのは、問題行動で特命捜査対策班に飛ばされた志村。知力よりも体力と怨恨優位で荒ぶる刑事役は珍しい高橋一生だ。特命っつっても閑職扱い、実質窓際。水谷豊はいないが、私の大好きな酒向芳(さこうよし)はいる。

 志村は後輩刑事(平埜生成(ひらのきなり))を目の前で殺された、苦い経験がある。キリコがその真相や数々の事件との関与をちらつかせるもんだから、結果協力体制を敷かざるを得ない警察の皆さん。

 実は本物のインビジブルはキリコの弟・キリヒト(永山絢斗)。初代犯罪コーディネーターだった父に英才教育を受けていた事実が明らかに。しかもだな、どうやら警察内部には内通者がいるという。警視庁のSP(山田純大)も、シノビと呼ばれるクリミナルズのひとりだったし。そらあ、わやだね。

 今期のTBSは警察をとにかく愚鈍に描く。誘拐犯を捕まえるどころか被害者家族に出し抜かれる「マイファミリー」も、警察組織を盛大にこけにしとるしな。

 傑作かと問われたら、数ミリ首をかしげて数十秒悩む作品ではあるが、観やすいのは間違いない。余計な恋愛要素を入れないし、殺害依頼もビジネスライクなオンデマンドでアウトソーシング(無駄に横文字にしたが、意味合ってる?)ってところが、いわゆる普通の刑事モノとは一線を画したし。既視感はあるけれど。

 内通者を探す視聴者からまず疑われたのは、年齢的にも酒向と刑事部長役の山崎銀之丞。説得力あるしね。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2022年6月23日号掲載