ウクライナ侵攻でロシア経済は冬の時代に それでも国際社会での国力は上昇する根拠

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 プーチン大統領は17日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された第25回サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで約1時間にわたって演説し、「ロシア経済を崩壊させる欧米の試みは失敗した。欧米の経済制裁にもかかわらずロシア経済は強固だ」と力説した。

「ウクライナ侵攻に対する西側諸国の制裁でロシア経済は早期に壊滅的な打撃を被る」と予想されていたが、ロシア経済はなんとか踏みとどまっている。

 ロシアのレシェトニコフ経済発展相は15日「今年の景気後退は従来想定していたよりも深刻ではない可能性がある」との見方を示した。5月の統計で景気の落ち込み幅が想定よりも小さい可能性が高いことがわかったからだ。

 インフレ率も穏やかに推移していることから、ロシア中央銀行は14日、主要政策金利をウクライナ侵攻前の水準の9.5%に引き下げた。通貨防衛に成功したロシア中央銀行はインフレ防止よりも景気刺激に軸足を移しつつある。

 通貨ルーブルの相場が急回復したことで国民の安心感が広がっており、首都モスクワの人々の消費行動にも大きな変化は生じていないようだ。

 ロシア人はルーブル相場を非常に気にすると言われている。ルーブルが強ければ平常心を保つことができるため、制裁の影響で西側諸国からの製品の輸入がストップしても、品質が落ちる中国製品で我慢している。制裁で最も打撃を受けている高所得者層(エリート)たちの不満も今のところ反体制活動に直結するレベルではない(6月16日付ニューズウィーク)。

 通貨ルーブルの安定は安全弁であることはたしかだが、それ以上にロシア経済に貢献しているのは制裁の影響で急上昇しているエネルギー価格だ。

 フィンランドのシンクタンクCREAは13日「ロシアがエネルギー輸出で得た収入は、2月下旬のウクライナ侵攻開始から100日間で930億ユーロ(約13兆円)に上る」との推計を公表した。

 ブルームバーグによれば、今年のロシアの原油・天然ガス収入は約2850億ドルに達する見通しだ。これに他の商品収入を合わせると、西側諸国の制裁で凍結された外貨準備3000億ドル分を上回るだろう。ロシアのウクライナでの軍事作戦に要する経費は莫大だとされているが、原油・天然ガスの価格高騰のおかげで商品輸出収入が膨れ上がり、長期戦への「耐性」が高まっている。

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