「脱・自前」で日本企業は変わるか セブンイレブンがダイソーの商品を売る深い意味

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「飲食店の二毛作」が可能に

 その一例として松江氏が挙げるのは、飲食事業を手掛けるスパイスワークスの取り組みだ。コロナ禍で時短営業を要請された飲食店は、夜間の売上が減少。ランチ営業で収入減を補おうにも、居酒屋ではランチ用の食材の仕入れや、メニュー作りのノウハウがない。

 そこでスパイスワークスが始めたのは、従来から取引のある生産者から食材を一括して仕入れ、飲食店にランチ用のレシピや販促品をパッケージにして提供するサービスだった。

〈今までは飲食店といえば、「仕入れ、商品開発、調理」までを一貫して“自前”で行うスタイルが一般的でしたが、この取り組みは「仕入れ+商品開発」を代替するプレイヤーを組み込むという“脱自前”です。この一連の動きによって、「飲食店の二毛作」が可能になったのです〉

 つまり、バリューチェーン(仕事を進めるための全体工程)を分解し、外のパートナーと組むことで新たなビジネス機会を創出したわけである。冒頭で取り上げた、ホンダとGMの提携強化や、セブンイレブンの店舗におけるダイソー商品の展開についても、同様の分析が可能だろう。

本業の再定義

 さらに、こうした「視点」に根差したアプローチを進めると、企業側に新たなメリットがもたらされるという。

〈全体の仕事を分解し、デジタル活用、外部プレイヤーとの連携を積極的に検討することで、本来の自らの強みであり、将来の成長に繋がるコア領域である“本業”の姿が見えてきます。こうした“脱自前”による“本業の再定義”には大きな意味があります〉

 先述の東急不動産による東急ハンズ売却などは、まさに本業の再定義という観点から下された決断だろう。松江氏は“脱自前”の必要性についてこう主張している。

〈過去の日本の成長を支えてきた自前主義をすべて否定するつもりはありません。しかし、これから日本が成長するうえで、足かせになっている仕組みや価値観を今一度見直す必要があると強く感じています。「自前主義に裏打ちされたタコツボ社会」から“脱却”して、日本らしい変革を加速することが、今求められているのです〉

デイリー新潮編集部

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