カジノ計画の末路 幹事銀行すら決まらず“ごまかし”で突き進んだ長崎県の「4383億円資金計画」

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 カネはある。ただし、今はまだ見せられない。そのうち明かすから心配しなくていい。こんなことを言う怪しい人間と関わった経験はないだろうか。まさしく、IR誘致を進める長崎県がこれなのである。しかも、こんな“欺瞞”を、県議会までが認めてしまったというのだから、呆れてものが言えない。

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和歌山は否決

 4月20日、長崎県議会は、県が誘致を目指すカジノを含むIR(統合型リゾート施設)の「区域整備計画」の議案を賛成多数で可決した。賛成は42票、反対は3票だった。28日、県は国へ計画認定を申請した。国の審査を通れば、2027年秋の開業を目指す。

 当初、IR誘致には全国の自治体が関心を示していたが、コロナ禍や地元民の反対などの影響で、横浜市などの有力自治体が続々と脱落。最後まで残ったのは、大阪府、長崎県、和歌山県であった。中でも、アメリカの大手IRオペレーターMGMとオリックスが共同事業者となる大阪は、資金が潤沢で、地元の反対運動もなかったため、当初から最有力候補とされてきた。終盤で、建設予定地に液状化などの土壌問題が発覚し、一時議会は紛糾したが、結局、申請にこぎつけた。

 一方、議会の反対で頓挫したのは、和歌山県である。資金調達の計画が怪しかったからである。事業者のクレアベストは、総事業費4700億円のうちの3250億円を銀行団から借受けるとしたが、議会は、同社がコミットメントレター(融資確約書)の提示を再三要求したのにもかかわらず提示しない点を疑問視。出資企業の一部は公表されたものの、全容が明かされなかったため、「資金計画はないに等しい」と否決したのだった。

幹事銀行が決まっていない

 だが、実は資金面に不安があるのは長崎県も同様なのだ。いや、和歌山以上といっても過言ではない。4月19日、県議会総務委員会で、共産党の堀江ひとみ議員は県にこう問いただした。

「幹事銀行が決まっていないということは、いまの時点で資金調達のスタートにすら立っていないということではないか」

 県は、資金計画4383億円のうち2630億円を金融機関から借り入れるとしているが、実は幹事銀行すら決まっていないのだ。IR推進課長は、「外資系を中心にコミットメントレターは取得できています」と答えたが、議会に提示すらしていない。通常、幹事銀行なくしてこのような規模の融資計画が成り立つはずがないことは議員の指摘なくとも、ビジネスに関わったものならば疑念を抱くことであろう。

 それだけではない。県と事業者であるカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(CAIJ)は、自己資本として、CAI本社、プライベートエクイティ等運用会社、外資系事業会社などから約1400億、大手国内企業や九州内企業から約351億円を調達予定としているが、これに関しても内訳は一切非公表なのである。

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